NPO通信No.15
NPO法人はなぜ収支計算書なのか
NPO法人の会計は、なぜ「損益計算書」ではいけないのか。なぜ「収支計算書」 を作成するのかとよく聞かれます。そこで、その説明を― 。
法人や団体の行う事業がうまくいっているかどうかを判断するのに、会社などの営 利法人の場合には、その事業によって純資産が増えているかどうかの一点を見れば明 らかです。純資産が増えていれば、事業はうまくいっており、純資産が増えていなけ れば事業はうまくいっていない。会社の場合の結論は、単純明快です。それは、別の 言い方をすれば、会社などの営利法人の事業は利益を計上して純資産を増加させるの が目的だということになります。
そこで、営利法人では純資産がどういう原因で増加し、またどういう原因で減少し たかを損益計算書に表して報告します。その数字は資本の増殖を至上のものとする価 値観に裏付けられた「価値」をたっぷり含んでいます。
複式簿記という記録集計手法は、そもそもこういう会計のために生まれたものでし た。複式簿記が、借方と貸方の2面を用いて取引の記録を行うのは、事業の目的であ る純資産の増加を、原因の面と結果の面の両面から捉えるためだったのです。といっ ても、複式簿記が2面的記録を行う理由はそれだけではありません。借方と貸方の2 面を増加情報と減少情報とに使い分け、借方と貸方の差異によって残高情報を表すと いう重要な理由もありました。
それでは、会社などの営利法人とは異なるNPO法人の行う事業は何によって判断 すればいいのでしょうか。会社などの営利法人と同じように純資産の増減でいいのか といえば、そうでないことは明らかです。NPO法人では、純資産がいくら増加して も、その目的とする事業はうまくいっていない場合があります。また逆に純資産がい くら減少していても、その目的たる事業はきちんと遂行されているという場合もあり ます。会社などの営利法人のように、単純な判断では済まないのです。
そこで、NPO法人などの非営利の法人では、価値に中立的な「収支会計」が行わ れます。「収支計算書」で報告される収入や支出は、損益計算書のように「資本の増 殖を至上のものとする価値」を含んでいません。ですから、NPO法人では、それぞ れの法人の事業の目的に照らして収入や支出の一つ一つを吟味して、事業がうまくい っているかどうかを判断をすることになります。
(田中義幸)