宗教アカウンタント通信No.100〇一日葬〇一日葬 本コラムも、今回で通算100回を迎えました。日頃のご愛読に感謝申し上 げますとともに、引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします。 近年、お通夜を行わず、葬儀・告別式のみを行う「一日葬(ワンデイセレモ ニー)」が増えてきました。拙寺の檀信徒さんでも、一割程度が一日葬となっ ています。 そもそも通夜は「夜を通す」と書くことでもわかるとおり、近親者が一晩中 念仏を唱えたり、酒を飲み交わして思い出を語り合い、亡くなられた方を供養 したりする儀式でした。仏教的にお通夜は必須であったかというと、そうでは ありません。お通夜はむしろ長い間国内に幅広く根付いてきた習俗であり、宗 教的儀礼ではないからです。 それが戦後、夜22時なり23時なりまでの「半通夜」という時間限定の行 事となり、さらに近年、ご遺体が病院から自宅を経由せず斎場へ直接搬送され るようになる、などの外部環境の変化も加わって21時くらいまでとなるなど 時間短縮に拍車がかかったようです。 そこからの流れで昨今の「一日葬」の普及につながっている、という見方があ ります。普及の理由としては当然のことながらご遺族の経済的な要因、あらゆ るライフイベントの経費を見直し、できるだけ切り詰めよう、という動きが主 です。 通常僧侶は、通夜・葬儀・告別式という流れの中で、亡くなられた方に引導 を渡し仏門に入っていただき、中陰の満ちる四十九日にご先祖様の待つ極楽浄 土に到達するようご供養をします。したがって一日葬であれば、通常お通夜で 行う儀式や法話を葬儀に組み入れます。例えば筆者の場合、お戒名の由来など の説明も葬儀後に時間を取って行います。 ですから我々は、多少の構成の変化はあるにせよ、一日葬には対応しますの で、檀家さんであっても「お通夜は絶対に行ってください」などとはお伝えし ません。感情の部分で「せっかくのお別れの儀式なので、二日間時間を取って じっくりとご供養をしたいし、それがご遺族のためにもなるのだが」という思 いは持っておりますが、こちらから指示するような話でもないと思っています。 頂戴するお布施も、二日間の供養が一日になった分、多少少なくなります。寺 院経営に与える影響も軽微ではありません。 生前、故人と縁があった方にしてみると、仕事の都合などもあり、葬儀・告 別式よりは通夜のほうが参列、焼香しやすいという点もありますが、近年、近 親者のみで故人を送り、友人の方には後日報告する、「家族葬」も増えてきて います。以前にもご説明した、宗教者を呼ばない「直葬」も相変わらず増加傾 向にあり、今後、一日葬への流れは緩やかに加速していくのではないかと思い ます。 そして我々宗教者としては、そのような時代の要請を受け入れつつも、折に 触れて葬送儀礼や先祖供養の大切さを人々に丁寧に説明し、檀信徒さんにとっ て菩提寺が遠い存在とならないよう、緊密な関係を維持していく、そのような ことが必要ではないかと感じています。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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