宗教アカウンタント通信No.104〇被災地訪問〇被災地訪問 筆者は「臨床宗教師」という資格を保有しています。 臨床宗教師とは、被災地や地域社会、あるいは医療機関や福祉施設などの公共 空間で、心のケアを提供する宗教者のことです。 関東臨床宗教師会に所属し、サービス付き高齢者向け住宅や病院の緩和ケア病棟に お邪魔して、さまざまな方とお話をさせていただいています。 さる7月5日、福岡県朝倉市の仮設住宅に伺い、九州北部豪雨から丸2年の慰霊祭に 参加してきました。継続的に支援活動をされている九州臨床宗教師会の皆様に ご挨拶し、2年前に被災され、居宅が住めない状態になり、現在仮設にお住いに なっている方たちのお話をお聞きしました。2年経過ということで仮設住宅は近々 壊され、住民の皆さんは公営住宅に移るか自力で部屋を探すか、の選択を迫られて います。 住居は一応用意されてはいるものの道路は完全復旧には遠く、護岸工事も中途 半端な状態で皆さんの心はまだまだ休まりません。仮設住宅で機能していたコミュ ニティが解体され、住まいが四散していくことによる不安感も住民の皆様の中に 拡がっています。住民の皆様は仮設撤去の延期を行政に要望しているのですが、 見通しは芳しくありません。 住民の皆様はそれぞれに、仮設住宅でのご自身やご家族の暮らしぶりを細かく 聞かせてくださいました。薄い壁やご近所との距離感などに悩まされながらも、 自主的に形成したコミュニティに積極的に参加し、互いに助け合っておられる 様子が伺えました。それでも時折り「どうしてこんなことになっちゃったんだろ う」と、災禍への遭遇を嘆く声も聞かれ、胸の詰まる思いでした。あらゆる慰め の言葉は無力であると感じ、ただひたすら、お話を聞かせていただきました。 私は九州北部豪雨の直後、仮設住宅ができる前、皆様が避難所にいらした時期 に一度訪問させていただきました。それから2年。こちら関東では朝倉市の状況 が報道されることはほぼなく、「大きな問題もなく、復興は着々と進んでいるの だろうな」程度の認識でいたのですが、実際には復興どころか復旧もままならない 状況です。 私も微力ではありますが支援のお手伝いを続け、宗教者・僧侶としてお役に立て ることをしていきたいと思います。当然のことながら臨床宗教師活動はすべてボラ ンティアで、1円のお礼も頂戴しません。寺院経営への寄与という観点からは遠い 活動ではありますが、寺院を経営することよりも大事な、宗教者としての務めを忘 れてはならないと考えています。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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