宗教アカウンタント通信No.106


〇お供物を支援団体に送る、という発想


〇お供物を支援団体に送る、という発想

 

今年もお盆、そして秋のお彼岸の時期が終わりました。 多くの檀信徒さんが墓参に来られ、本堂に立ち寄ってご本尊に手を合わせて帰って行かれ ます。その際に、ご本尊様にお供えするお供物をご持参される方が多いです。 それはお菓子であったり、飲み物であったりします。一定期間お供えしたあとは、ご法事 の際にお出ししたり、お手伝いをしてくださっているご近所の方におすそ分けしたり、寺 の者がいただいたりします。

ただこの時期は、どうしてもいただききれない分量になります。 筆者が住職を務めている寺は決して大きな寺院ではありませんが、いただかぬままに賞味 期限切れになってしまうお菓子はあります。そして、寺の規模が大きくなればなるほど、 その悩みは深刻なものになります。

そういった問題への解決策のひとつが、「いただききれないお供物を、必要としている方 に送る」という発想です。 拙寺では「おてらおやつクラブ」 https://otera-oyatsu.club/ という特定非営利活動法人と契約し、不定期でお菓子やお飲み物を同じ県にある「こども 食堂」に送っています。 「こども食堂」とは、「地域住民や自治体が主体となり、無料または低価格帯で子どもた ちに食事を提供するコミュニティの場」のことで、必ずしも豊かではない家庭の子どもた ちにもおいしいお菓子、温かい食事を提供する試みとして注目されています。 しかしながらマンパワーの確保や食材の調達・維持の問題もあり、多くの人の手助けを必 要としています。

そんな中、「お菓子が余っている寺」と「お菓子が欲しいこども食堂」の橋渡しをする団 体が生まれたというわけです。

当該法人は寺からできるだけ距離の近い「子ども食堂」を寺に紹介し、寺がその食堂に宅 配便でお菓子や飲料、調味料、日用品などを送る、というスキームです。当然、送料は寺 が負担します。 なかなか定期的には送れていないのですが、送った都度連絡はいただき、喜んでいただい ている、微力ながらもお役に立てている、という感触は感じられます。

檀信徒さんのみならず、世の中のすべての人に施しを。このような試みが、大きな流れと なり、日本中の寺院に広まっていくことを、切に願います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)