宗教アカウンタント通信No.107


〇様々な宗派


〇様々な宗派

 

 ひとくちに仏教といっても、経典の解釈や開祖の思想により分派が繰り返され、 さまざまな宗派が存在しています。

 文化庁の宗教年鑑(平成30年版)によれば、鎌倉時代初期までは日本の仏教は 8宗(南都六宗と天台宗・真言宗)あると考えられていました。しかし鎌倉時代 には、定着した仏教文化を背景に法然上人の浄土宗、親鸞聖人の浄土真宗、日蓮 上人の日蓮宗など日本人による独自の仏教が創唱されました。  また、この時代には入宋した栄西と道元により、臨済宗と曹洞宗が伝えられま  した。戦前,宗教団体法以前、公認された仏教宗派には13宗56派がありました が、昭和14年に宗教団体法が成立した際に28宗派にまとめられました。

 上述の宗教年鑑の統計では、現在、宗教法人数が最も多いのが、曹洞宗(1453 9法人、以下同じ)です。曹洞宗はご存じの通り禅宗の一派で、愛知県、新潟県、 静岡県などのほか東北、北海道にも多く寺院を抱えています。  曹洞宗では悟りを目的としない修行でこそ悟りが開かれるとされており、悟り を求める修行は打算的な悟りを開くに過ぎないとしています。 簡単に言うと、「悟りを求めよう、という目的ありきで修行に臨んではならない」 ということです。本尊は釈迦如来、つまりお釈迦様です。  多くの曹洞宗の寺院では座禅会を開いています。ご興味があれば参加してみてく ださい。禅に関してご住職に質問を投げかけ、会話を楽しんでみてもいいでしょう。

 曹洞宗に次ぐのが浄土真宗本願寺派(お西さん)(10287)、真宗大谷派(お 東さん)(8666)、浄土宗(7035)の三派です。いずれも修行による成仏を否定 し、念仏によって極楽往来するとされています。本尊は阿弥陀如来で、「南無阿 弥陀仏(なむあみだぶつ)」とお題目をお唱えします。 地域別の分布では、浄土宗は東京、愛知、京都、大阪など都市部を中心に幅広く 勢力を保っており、真宗大谷派は新潟県、石川県、愛知県、岐阜県など中部地区 に、浄土真宗本願寺派は大阪府、広島県、福岡県、熊本県など西日本に多く寺院 が存在します。  真宗大谷派と浄土真宗本願寺派はいずれも親鸞聖人の教えを継承する宗派です。 親鸞さんが肉食や妻帯を実践したこともあり、比較的世俗に近いスタンスをとっ ている僧侶が多く、剃髪もしていません。平服でいると見た目は普通の勤め人と 変わらないお坊さんです。

 このほかにも日蓮宗(5158)、高野山真言宗(3598)、天台宗(3331)などの 宗派はそれなりの数の寺院を有しています。  ただ、今回ご紹介した数字はあくまで各宗派の宗教法人数であり、檀信徒さん の数の多寡とは必ずしも整合しないことにご留意ください。。ある調査では、檀 信徒数でみると浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、浄土宗の三派が突出して多くな っています。

 各宗派の特徴に関しては別途ご説明していきたいと思いますが、一口に仏教と か寺院とか僧侶とかのくくりでまとめるほうが無理なくらいに各宗派のスタンス は多様です。税理士先生の皆様も、関与先の寺院の宗派を常に意識して業務にあ たられることをお勧めいたします。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)