宗教アカウンタント通信No.109


〇子年の年頭に


〇子年の年頭に

 

 今年は子年。意外にも、仏教とねずみには大きな関係があります。 もともとはインドのシヴァ神の化身であった「マハーカーラ」という神が、 日本に入ってきて仏教に取り込まれ、「大黒天」という仏様になりました。  この仏様の使徒がねずみと言われており、その関係で大黒天を祀ってある 寺院にはねずみの彫刻や彫像が置かれてあることが多いのです。  これは、ねずみの浄土は地中にあり、そこから出てきて人間界に現れ、 福徳をもたらす、という古くからの言い伝えによるものです。

 現代では、ハムスターなど一部の種を除いて厄介者扱いされることの多い ねずみですが、そもそも敵か、味方か、などという判断は人間の勝手かつ 恣意的な基準によって下されるもの。かつては、地震や災害を予知する動物 として崇められていたこともあるわけですし、あのディズニーの超有名 キャラクターもねずみなわけですから。同じ生命を持ち、同じ星に生まれて きた生き物の仲間として、上手に共生していきたいものです。

 話は変わりますが、今回の年末年始、お正月には例年と変わらない人数の 墓参の方が拙寺にお見えになりました。  しかしながら、年末に関しては、例年を大きく上回る檀信徒さんが来られ ました。ちょっとびっくりするくらいの人数でした。  お正月の天気予報をチェックして「年明けは天気が悪そうだから早めに お墓参りをしておこう」と思った方が多かったのかもしれませんが、何かそ ればかりでない、一般の方のお心の中で、ご先祖様を供養する気持ちが高ま っているのではないか、そんな思いもしました。  令和への改元にあたり、皇室の方々の落ち着かれた振る舞い、そして脈々 と紡がれてきた天皇家の系譜や歴史を目にするにつけ、自らのご先祖様にも 思いをはせ、墓参に訪れる気持ちが高まった。もしかしたらそんな方も少な くないのではと感じました。

 外国から来て働く方もしだいに増え、人口構造の変化によりライフスタイ ルや家族構成も変容し、ご先祖様に対する供養の気持ちも今後変わってくる のかもしれませんが、節目節目できちんと墓参をし、ご供養を行う。  そんな習慣がいつまでも、100年先にもこの国に残っていてほしいもの だと、大いに思いました。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)