宗教アカウンタント通信No.110


〇仏教に関する実態把握調査


〇仏教に関する実態把握調査

 全日本仏教会は昨年、大和証券と共同で標記の調査を実施しました。 調査対象は一般、仏教信者それそれ約3,700名。仏教関係者や僧侶でなく、一般生活者に 聞いた、興味深い内容です。

詳細は同会のサイトで公開されていますのでご覧いただきたいのですが、筆者が気になっ た点は以下の通りです。

・「先祖の墓所が居住している場所と同じ都道府県内にある」男性20代41.7%・60代60.4 %女性20代51.8%・60代56.9%
・【仏教信者】の「仏教への関心」は、菩提寺の有無の影響は小さく、菩提寺が過疎地域であることの影響は少し大きい。
・【仏教信者】では菩提寺の有無は、一都三県居住層、一都三県以外居住層に関わらず、「仏教への信仰心」に与える影響がかなり小さい。
・【仏教信者】の一都三県以外居住層では頻繁に情報提供が行われている様子が伺える。
・一都三県居住層で親と距離がある場合、【一般】、【仏教信者】の「無回答(何も
 情報を提供されていない)」比率は80%、71%と菩提寺との接点がないことが分かる。
・【仏教信者】は菩提寺への満足度が高く60%を超え、【一般】でも47%が菩提寺に満足している。
・過疎/非過疎に関わらず、菩提寺との距離が2時間以上離れると「十分満足である」比率が低下傾向にある。
・【一般】では「これから付き合いは減少すると思う」がトップ。【仏教信者】でも  「これから付き合いは減少すると思う」が39%存在し、特に親と距離がある層でより顕著な傾向が表れている。

これらの調査結果から推測できるのは、
・菩提寺への満足度はほぼ5割。
・菩提寺の有無と仏教への関心・信仰心の相関は小さい。
・菩提寺との距離が離れると満足度は低下する。
・菩提寺と檀徒の関係は今後希薄化していくと考えられている。
といった事実です。

 その背景には、「日本人の宗教心の希薄化」「老後生活への不安による冠婚葬祭費 の見直し気運」「人口の都市集中による地方墓地での墓じまいの増加」といった要因が あると思います。憂うべき風潮と呼べるかもしれません。

 しかしながら、我々宗教者が「営業努力せずとも一定の収入が見込める」という事実に 胡坐をかき、檀信徒さんの満足度を維持、もしくは上げていく努力を怠っていたことも 否定できません。Webサイトも含めた日常の情報発信、気軽に山門をくぐっていただけ るような雰囲気づくり、お経やお戒名の意味のわかりやすい説明など、なすべきことは いくらでもあります。幸いにして、ヨガ、写経、御朱印など、「仏教的なもの」に関す る若年層の興味は根強いものがあります。世の中のトレンドを意識しつつ、真剣に「生 き残り」を模索していくことが求められます。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)