宗教アカウンタント通信No.111〇寺と檀信徒さんとの距離〇寺と檀信徒さんとの距離 先月も申し上げましたが、菩提寺との物理的な距離が遠くなるにつれ、檀信徒さん の「菩提寺・菩提寺住職との心理的距離」も遠くなる、という調査結果が全日本仏教 会から発表されました。 では寺院経営者にとって、「檀信徒との心理的距離」とは、何を意味するのでしょ うか。具体例として想起されるのは、「何かあった時に相談に来てくれる」「何もな くても気軽に寄ってくれる」、檀信徒さんにとってそのような存在であれば、その寺 は「檀信徒との距離が近い」といえるのではないかと思います。 少なくとも昼間は平日、土日を問わず住職かその家族がいて、墓参のついでにちょっと 立ち寄れ、お茶でも飲みながら一休みして世間話や家族の近況を語れる、檀信徒さんに とって寺がそんな場所でありたいと思っております。 それは「宗教法人の健全な経営」に直接寄与するものではありませんが、「人々の 心のよりどころであること」が宗教の存在意義なのは疑いのない事実です。まずはし っかりとそのことを再認識し、どんな悩みも受け止められる宗教者を志向して研鑽を 積み、コミュニケーション能力を高め、あわせて本堂、境内を清潔に保ち、「ハード ル低く、間口の広い寺」を目指す。これがひいては、当該宗教法人の永続性につながる、 と言えるのではないでしょうか。 先日、中国地方にある山間の市に伺って、他宗の僧侶の皆さんと意見交換をする機会が ありました。聞けば、ご葬儀やご法事の際にいただくお布施の目安は筆者の地域のそれ にくらべて3割ほど低い水準でした。 しかしながら、檀信徒さんが二日に空けずお米やお野菜を届けてくださるとのこと。 お檀家さんは常に「おじゅっさん(住職のこと)の生活は俺たちが支えるから」とお っしゃっているそうです。お互いにお互いを思いやり、できることをする。そこには 理想的な寺檀関係が成立しているように思えました。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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