宗教アカウンタント通信No.113


〇看脚下


〇看脚下

先月も申し上げた通り、新型コロナウイルスの影響は世界に及び、膨大な数の 犠牲者を出す状況となっています。わが国でも緊急事態宣言が出され、飲食や エンターテイメントはもちろん、通勤や通学にも大きな影響が出ており、例年 なら多くの人々が行楽地に移動して休暇をエンジョイするはずのゴールデン ウイークも、今年はまったく様相を異にしたものとなりました。

このような状況の中、宗教者はどのような行動を取るべきでしょうか。 看脚下。自分の足元を見よ、という意味の禅語です。 転じて「足もとに注意 せよ」、さらに「己の立脚するところを見失うな」、「常に自戒せよ」、と いった意味合いで用いられることもあります。

檀信徒さんの中には、ご自宅に家族全員、朝から晩まで揃っているのは息が 詰まる。ストレスがたまる、家庭不和が始まっている。そんな方もおられる かもしれません。

そんな方たちのために、宗教者ができること。 一義的には、宗教者として基本に立ち返り、檀信徒さんそのほか、悩んでい る方の話にひたすら耳を傾ける。そのうえで、自分の引き出しの中から、少 しでもその方の気持ちが和らぐようなお話をする。 そしてもうひとつ。いわゆる「密」の状態にならないよう工夫して、写経や 座禅、瞑想といった「仏教的行為」の場所としてだけでなく、一般の方が単 に心を落ち着けられる時間と空間を宗教施設の中、本堂なり客殿(大広間) なりで提供できないか、検討してみる。

平素から本堂や客殿を積極的に開放している寺院の中には、この状況下にあっ ても寺子屋スタイルで子供たちが勉強できるスペースを提供しているところ もあります。 拙寺でも18畳・18畳・12畳の客殿(大広間)があり、基本的に平日は 空いています。ご近所の方の休憩スペースとしてご利用いただくよう、ご用 意をしています。

まだまだ先は見えず、出口まであと何メートルあるかわからないトンネルの 中を歩いているような状況ですが、宗教者も一般生活者の皆様も気持ちをしっ かり持って、一刻も早い事態の収束を願いつつ、そのためにできることを少 しずつ積み重ねていきましょう。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)