宗教アカウンタント通信No.114


〇三密


〇三密

 5月25日に非常事態宣言が解除され、日本社会も次第に落ち着きを取り戻し つつあるように思います。しかしながら、新型コロナウイルスのワクチンが開 発されたわけでも、感染者が0になったわけでもありません。長期間の休校を 余儀なくされた教育現場の混乱収拾と復旧はこれからが本番です。

以前の日常を取り戻し、経済活動を復活させながらも、飛沫感染・接触感染 を防ぐべく細心の注意を払いつつ、ウイルスの第二波、第三波の襲来に備える。 政府や自治体のみならず、我々ひとりひとりにも引き続き、緊張感を持って 日々を過ごすことが求められます。

 「三密」。新型コロナウイルスの感染源として注意すべき「密接(場所)、 密閉(空間)、密集(場面)」の環境としてすっかり有名になりました。 その言葉がメディアから流れてきたとき、宗教者、特に筆者のような密教系の 僧侶は驚きました。「三密」は、仏教、特に密教の世界では、まったく別の意 味を持つ単語であるからです。

三密。それは「自分自身が仏さまである」と気付くための方法です。これは 具体的には、身密(両手の指を組み合わせて印を結ぶ)・口密(真言を唱える) ・意密(精神を集中する)といいます。

「行動・言葉・こころ」の三つを整えることで、自分自身が仏さまであるこ とに気付く、これこそが、即身成仏(来世ではなく、現世で仏になれる)と いう密教の哲学なのです。

 また、仏門に入っているわけでもない一般の方にとっての「(密教的)三 密」。これは、例えば「丁寧に身を清める」「周りの人に感謝の言葉をかけ る」「自分の心の動きを俯瞰的に見つめる」そんなふるまいがあてはまると 思います。 これらを続けることにより、より人間性が磨かれ、周囲からも尊敬され、人 としての高みに到達できることが期待されます。毎朝、必ず思い出し、実践 していただければと思います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)