宗教アカウンタント通信No.115


〇コロナ禍の中での宗教法人の現状


〇コロナ禍の中での宗教法人の現状

 メディアで報じられることはあまりないのですが、新型コロナウイルスの感染  拡大を受け、寺院など宗教法人の活動にも大きな影響が出ています。

 まずご葬儀。厚生労働省からは、葬祭業従事者への注意事項が発表されています。 これを受け、各宗派は末寺に対して、留意すべき点について告知を行っています。

具体的には ・宗教者とご遺族の間に十分な距離を取る。 ・ご遺族には、椅子の間隔をあけて着席していただく。 ・ホールなど斎場の換気を十分に行うよう葬儀社に依頼する。 ・ご遺族と一緒にお経を唱和する際には微音もしくは黙読にて行う。 ・会葬者の方はご焼香のみでお帰りいただくよう葬儀社を通して依頼する。

こういった内容です。 実際に筆者も、4月下旬に発生した檀家さんのご葬儀に際して、「このような 状況なので、できるだけ少人数で執り行いたいので、通夜・葬儀への出仕はご 遠慮いただけますか」という打診をいただきました。本来、檀信徒さんの通夜・ ご葬儀は何をさておいても出仕する、というのが菩提寺の住職のスタンスです ので、このような依頼はお断りするのですが、今回は事情を考慮し、お申し出 を受け、お戒名の授与のみを行わせていただきました。 当日はそのお檀家さんの通夜・葬儀の時刻に合わせ、自分の寺の本堂でご供養 をさせていただきました。

次に、ご法事。こちらの注意事項は基本的にご葬儀に準じますが、ご法事は客 殿に(大広間)に集まってお茶を飲んでいただき、定刻になったら寺の本堂に 移動していただき法要を行うことが多いので、寺の責任で客殿および本堂の換 気を十分に行うことが求められます。 お茶もペットボトルをお出ししてそのまま飲んでいただくという運用に変更し ました。 拙寺ではありませんでしたが、霊園などでは集会所でなく墓前でのご法事も行 えるようになっており、換気の心配のない屋外の墓前でのご法要も多く行われ たようです。 ご法事は通夜・ご葬儀よりも自由度が高く、日程面でも融通が利きます。ただ この春は、「ご法事を延期する」のではなく「ご法事をとりやめる」という意 思決定をする檀信徒さんが多かったと感じています。

以上申し上げたように、新型コロナウイルスの感染拡大は、ご葬儀、ご法事の ダウンサイジング、小規模化につながり、結果的に寺院など宗教法人の減収と いう結果をもたらした、という事実は間違いないと思います。

言うまでもなく、医療従事者の方やライフライン関連等の業務に従事される、 いわゆるエッセンシャルワーカーの方々のご苦労に比べれば、我々の経営面の 悩みなど取るに足らないものであると思っています。

これからお盆の時期を迎えますが、感染拡大を防ぐという強い気持ちを持って 環境を整備し、同時に真摯な気持ちであらゆる仏事に向き合い、丁寧にご供養 を行っていきたいと思います。あわせて、日々ご苦労されている皆様の心の安 寧に少しでも寄与できるよう、徳を高め、修行を積んでまいりたいと考えます。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)