宗教アカウンタント通信No.116


〇「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」結果報告


〇「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」結果報告

大正大学地域構想研究所・BSR(Buddhist Social Responsibility)推進セン ターは、このほど、全国の寺院に対して、新型コロナウイルスの感染拡大が葬 儀等の儀礼にどのような影響を与えたか、またその対応についてインターネット 調査を行いました。 当該調査は全国の寺院関係者に向けてWEBアンケートを行い、517件の有効回答 数を得ました。

https://www.tais.ac.jp/guide/latest_news/20200710/67695/

詳細は大正大学のWebサイトをご覧いただきたいのですが、同サイトによれば、 主なポイントは以下の通りです。

・「葬儀についての変化」に関して、8割以上が「会葬者の人数が減った」、 4割が「一日葬など葬儀が簡素化された」と回答

・「今後の法務にどのような変化があるか気になっていることや心配なこと」 の回答のうち、「葬儀・法要の簡略化」が3割以上と最も多く、次いで「法要 が途絶える、法要文化の衰退」「寺院の行事縮小・衰退」との懸念があげられる

・仏事においてもオンラインでの対応が試みられている事例が多数みられる

・多くの寺院が、新型コロナウイルスの不安や不確かな情報による混乱のなか にある檀信徒に対して、その軽減を目指して、仏教に基づいたメッセージを発 信している

ご葬儀やご法事は、ご家族でのレジャーやご友人との会食などの、いわゆる 「不急不要のイベント」とは基本的に一線を画すものであり、「よほどのこと がない限りはしっかりと実施すべきもの」、という認識に立つべきと、個人的 には考えます。しかしながら、ここまで感染拡大が本格化し、亡くなった方の 数はともかく感染された方の数が増加の一途をたどっている状況においては、 檀信徒さんも「お坊さんも含め、できるだけ人が集まらないようにしたい」、 そして僧侶の側も「檀信徒さんがそのようなお気持ちであれば、出向かない、 という選択もある」という気持ちが出てきてしまうのは、ある程度やむを得な いことかもしれません。

結果として、今回の統計にあるように、亡くなった方を弔うご葬儀ですら、参 列者の人数を絞る、時間を短縮するなどの方法で簡素化されてしまっています。 先月も申し上げましたが、拙寺におきましても、ご葬儀への出仕を遠慮してほ しい、と、檀家さんから申し入れを受けました。

そういった中で注目されているのが、今回の調査でも見られた、ZOOM等のオン ラインコミュニケーションツールを利用した「リモート形式によるオンライン 法要」です。具体的には、本堂内にWifi環境を設定し、スマートフォン等で僧 侶の法要をリアルタイムで中継する。檀信徒さんのほうは自宅からインターネ ット経由でその様子を見て、ご本尊に手を合わせる、といったやり方をします。

すでに先進的な寺院でこの試みが始まっておりますが、現時点では僧侶が準 備・提案をしても、「ではリモートでお願いします」という檀信徒さんの数は 決して多くないようです。

実際に寺に行かずに自宅の居間、あるいは仏間で、僧侶の法話と読経に耳を傾 けることがどれだけ檀信徒さんの心に残るのか、正直筆者もまだわかりかねて おります。いままでは、寺の本堂という静謐な空間に身を置いていただくこと でご供養のお気持ちを強く持っていただいていました。その「場」の概念が大 きく変わることで、檀信徒さんがどのようなお気持ちになられるか。喜捨とし てお布施を包んでいただけるだけのお話、お経がインターネット回線を通じて 行えるか。

また、リモート形式になることで、今までなかなか寺に足が向かなかった若い 方との接点が生じるにあたり、どのような心持で、どういったお話をすればそ の方たちに訴求できるのか。

ただ言えることは、我々が「リモートなど論外」などと頭から拒否しては絶対 にいけない、ということです。1000年を超える時代を生き抜いてきた仏教の伝 道者と言えども、技術の進歩を受け入れ、新しい生活様式に順応した法要のか たちを考えていかねばならないのではないでしょうか。 筆者も僧侶のひとりとして、日々、試行錯誤しながら、よりよい布教の形を探 していきたいと思います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)