宗教アカウンタント通信No.118


〇樹木葬


〇樹木葬

新たな埋葬のかたちとして近年急速に注目されているのが「樹木葬」です。鎌倉新書が運営している 「いいお墓」というサイトの利用者への調査(お墓の消費者全国実態調査(2019年)によれば、 購入したお墓の種類として、

第1位が 「樹木葬」 41.5%、第2位 「一般墓」 27.4%、
第3位 「納骨堂」 24.9%、「その他」 6.1%と いう結果になったそうです。

2018年の調査では、
第1位 「一般墓」 41.2%、第2位「樹木葬」 30.0%、
第3位 「納骨堂」 24.8%

だったため、今回の調査で樹木葬と 一般墓の順位が逆転する結果となった、とのこと。

同社が全国調査を開始した 2010年時点では、約9割が一般墓を購入しているため、 10年間で消費者の嗜好が大きく変わったことが読み取れます。

ご存じの方も多いと思いますが、樹木葬とは、墓石の代わりに樹木をシンボルとする お墓です。桜やハナミズキなどのシンボルツリーの近くに遺骨が埋葬されます。

具体的な墓所のイメージは「樹木葬」で検索していただければと思いますが、 合祀型(他の人と同じ場所に埋葬して、共有のシンボルツリーに礼拝するタイプ)と 集合型(遺骨を納骨するカロート(納骨スペース)は個別に割り当てられ、礼拝は 共有のシンボルツリーを用いるタイプ)があります。 拙寺にも昨年あたりから、「樹木葬の墓地はありませんか」というお問い合わせが増えてきました。

さて、樹木葬が注目されている理由ですが、
1)コストが安価である
2)自然に囲まれていて雰囲気がよい
という二点が大きいと思います。

まず一点目のコスト。通常の墓地のように石碑が使われることはありません。
(プレートのような形で石板が使われていることはあります)
その分、原材料費はかかりませんので、当然費用は抑えられます。地域にもよりますが、 安いところでは、合祀型なら10万円程度、集合型なら20万円程度から用意されているようです。 石碑のタイプの1〜2割程度の費用で済むのですから、注目が集まるのも頷けます。

二点目の雰囲気。行かれてみるとわかりますが、特に郊外の樹木葬墓地は、自然の中に 立地しており、石碑という人口のシンボルもありませんし、気持ちいい風に吹かれることが できます。こんな場所に眠りたい、と思う方が多いのも当然かもしれません。

では、逆に、樹木葬のデメリットとはどのようなものでしょうか。

1) 墓石に比べて先祖のつながりを感じづらい

「○○家之墓」と彫られ、ご先祖様の俗名、戒名、没日などが記されている大きな石碑は ありませんので、物足りなさ、違和感を感じる方もおられるかもしれません。

2)墓所の手入れが大変

場所によっては雑草が伸びるなどしますので、墓所内の手入れが思いのほか大変です。 また、シンボルツリーが台風などの数十年にわたって自然災害に耐え、現況をとどめうるか、 という疑問も残ります。

3)改葬が困難

石碑の墓地の場合は上述したカロート(納骨スペースが)がきちんと石で作られていますが、 樹木葬の場合、それが用意されず、土に還る材質の布袋、あるいは、トウモロコシで作られた お骨壺にご遺骨を入れて埋葬する、ということがよくあります。 したがって、後年、何らかの事情で墓じまいをして、他所にご遺骨を移したい、と思っても、 ご遺骨がきれいな状態で掘り出せる保証がありません。

現在、さまざまなタイプの樹木葬墓地がさまざまな場所に造成されています。 ご興味のある方は必ず、一度現場に足を運んで、管理担当者の説明をしっかり聞いたうえで ご検討されることを、お勧めいたします。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)