宗教アカウンタント通信No.120


〇お坊さんユーチューバー


〇お坊さんユーチューバー

宗教法人は、宗教団体が法人化し、所轄官庁の認証を得た法人です。そして、宗教団体の要件は、
・教義をひろめる
・儀式行事を行う
・信者を教化育成する
・礼拝の施設を備える
といったことがあげられます。

その意味で、宗教者がインターネット環境を利用して、檀信徒さんを相手にするのみならず、幅広い地域や 世代の人に向かって、それぞれの宗教、宗派の教義をわかりやすく解説したり、寺院や教会など自らの施設、 法人の紹介をしたりすることは、きわめて理にかなっている活動だと言えます。

とは言っても、極めて長い間、面と向かって相手の顔を見て反応を伺いながら話をしてきた我々宗教者にとって、 聞き手の姿がまったく見えない環境で話をすることには正直、抵抗があります。 まして、実名公開、顔出しが基本となっているyoutubeなどの動画投稿サイトにおいては、どこからどのような 反応があるかわからず、何が起こるか想像もできないため、腰が引けてしまう傾向にあり、筆者もいまだに 着手できておりません。

そんな中、定期的に動画投稿を行い、一万人規模のチャンネル登録者を獲得している僧侶も存在します。 彼らの多くは、「従来型メディアである程度顔と名前を売って、その知名度を武器に動画投稿を行う」といった アプローチをとっておりません。市井のひとりの僧侶という立場で配信をはじめ、その充実した内容と継続性で評価を得て、 徐々に視聴者を増やしています。

先日、それらの「お坊さんユーチューバー」がネット上で大集合する催しがありました。 オンラインごえんさんエキスポ2020という、浄土真宗系10派により共同開催されたオンラインイベント内の一企画です。

https://youtu.be/IsynzOBvdOs 「お坊さんユーチューバー」オンラインイベントURL

そのアーカイブが上記URLにアップされているのですが、 この6時間33分過ぎから「お坊さんユーチューバー大集合」という1時間の番組を見ることができます。 そこには浄土真宗のみならず浄土、天台、曹洞など各宗派の人気ユーチューバーが顔をそろえ、 日ごろの配信のテーマや注意点、苦労話などを率直に語りあっています。 詳細はそちらをご覧いただければと思うのですが、感じることは、それらのユーチューバーたちが、 実年齢とは関係なく、みな若々しく、明るいということです。 そしてみな「仏教や宗派のことを一人でも多くの人に伝えたい、わかってほしい」という意欲にあふれ、 「この坊さんと話してみたい、直接相談してみたい」と思わせる魅力を持っています。

結局のところ、直接対話であれオンラインであれ、大事なところは「人間力」なのであろう、と改めて思い知らされました。 宗教者の存在理由が教義を広めたり信者を育成したりすることである以上、仏教書を読むなり高僧の話を聞くなりしてインプットに 励むことも大事ですが、話をする、いわゆるアウトプットのスキルを上げ、魅力的な、 また話を聞きたいと思っていただける存在になることが、より重要であると痛感しました。 筆者もまだまだ微力ではありますが、広く社会に向けて情報発信していけるような宗教者を志向していきたいと思います。

今年は思いもよらぬ波乱の年になりました。 来年は、すべての方が平らかな気持ちで過ごせる、 平穏な年であることを願いたいものです。 皆様、よいお年をお迎えください。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)