宗教アカウンタント通信No.123〇空気感〇空気感 1月に、筆者がお世話になっている税理士先生のお身内が亡くなりました。拙寺に墓所を 取っていただいているわけではないのですが、懇意にしていただいるご縁で「葬儀のお経を あげてくれませんか」とご依頼をいただきました。 その際「(埼玉から葛飾区までの移動は大変だろうから)ZOOMを使ってのリモート読経で もいいですよ」とのお言葉もいただいたのですが、現時点では筆者は「オンライン法要・葬 儀」に懐疑的な見方を持っておりますので、現地までお伺いして集会室でご葬儀の読経をし、 引導を渡させていただきました。 そのような選択をした理由ですが、簡単に言えば、法要なりご葬儀なりの仏教的・宗教的 な行事において、導師である宗教者と参加者が同じ空気感を持つことはきわめて重要である、 と思ったためです。 また、先日、首都圏にある、不動明王をご本尊とするある寺院に行ってまいりました。 私事ながら還暦を迎え、男性の厄年でもありますので、護摩(ご本尊の手前の護摩壇で護摩 木をもやしながら祈?する手法)で加持をいただいた厄難消除のお札を頂戴いたしました。 時節柄、至近距離で導師様の護摩を拝見するわけにはいかなかったのですが、ある程度の距 離を置いていてもその荘厳な空気と緊張感はひしひしと伝わってきました。高くあがる炎を 見ながら、護摩木がはぜる音を聞きながら、心を打ち震わしておりました。 改めて「空気を感じること」の意義を痛感しました。 もちろん、身体的・物理的事情により宗教施設に足を運ぶことが困難である方もおられま す。そのような方のためにオンラインで葬儀・法要を行うことの価値やメリットも存在する と思います。オンライン座禅会なども「仏教を感じてもらう入口」としては極めて有効であ ると考えますし、「お坊さんと語ろう会」のようなネットイベントも大盛況で、参加された 方の満足度もかなり大きいようです。 しかしながらそれはあくまで次善の策であり、基本はあくまで「宗教者と同じ場に身を置 くこと」が、宗教を理解し、ご供養を行うことの大原則ではないかと改めて感じました。 筆者が毎朝の勤行を行うにあたり本堂の扉を開けて中に入りますと、なんともいえぬ「気」 に包まれるのを感じます。その「気」こそが、千年以上の間、多くの人を引き付けてきた「 仏教の本質」ではないでしょうか。 幸いなことに、多くの寺院はそれなりの規模の本堂や客殿を持っています。少人数であれ ばいわゆる「密」の状態を形成することもありません。お時間がある時に、ぜひお近くの寺 に足を運び、御朱印をいただく際に、「よろしければ、ご本尊を拝ませてもらえませんか」 とお尋ねになってみてください。時間のある時でしたらご住職が、本堂に案内したうえでその 寺の由来やご本尊、宗派の教義等を教えてくれるかもしれません。その際に、宗教施設の持 つ「気」をしっかり感じてください。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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