宗教アカウンタント通信No.127


〇ZOOMでの交流


〇ZOOMでの交流

この一年、長引くコロナ禍の中、筆者はインターネット環境においてZOOMというツールを 利用して日本各地の皆様との交流を頻繁に行うようになりました。 最も頻度が多いのが「お坊さんと語ろう会」「坊主カフェオンライン」「お坊さんに聞いてみよう」 などのタイトルで開催される、10〜20人程度が参加するオンライン交流会です。

交流するお相手は「他の宗派の僧侶」「仏教に興味を持っている一般の方」のどちらかであることが多いです。 この二つの層のいずれも、以前はなかなかお話をする機会のなかった方たちであったのですが、 ふりかえってみるとこの一年間で百人近くの方とお話をしておりました。

それらの方たちとのやりとりはすべてが刺激と示唆に富むもので、関わっていただいた方に 心からの感謝を申し上げたいと思っています。

例えば、筆者は真言宗の僧侶であり、平素読み込む仏教書も弘法大師空海に関連するものが ほとんどなのですが、多宗派の僧侶の皆様はご自身の宗派の開祖のみならず原始仏典にも 精通されており、その知識には感服させられます。

特に日蓮宗の僧侶の皆様は日蓮上人の教えや生き様に加えてブッダの思想もしっかり理解し、 コミュニケーション能力にも優れているように思います。

また、ある禅宗の僧侶の方は「オンライン座禅会」を開催しておられるのですが、毎回イギリスから 参加される英国人ご夫妻に対して丁寧かつ流ちょうな英語で禅の思想や座禅のノウハウを 説明しておられ、毎回尊敬の念を持って拝見しています。

一方、一般の方もしっかり勉強し、問題意識を持ったうえで交流会に参加される方ばかりで、 こちらも毎回緊張感を持ってお話をさせていただいております。特に「真言密教の世界観や 死生観」など、「難解な問いであり、かつ、平明に答えることを要求されるもの」に関しては 全神経を集中して言葉を選び、丁寧にご説明するようにしております。

同時に、「宗門の大学でなく一般の大学に行ったのはなぜか」「一般企業の勤め人と兼任して いたことで檀信徒さんへの対応に役立つ部分はあったか」といった、今まであまり聞かれたことの なかった素朴な質問も多くいただきます。 それらに関しては、お答えする中で自身の来し方の整理もでき、聞いてくださったことに 感謝の念を持ちながらお答えをしております。「わかりやすいお話でした」などの言葉を いただくこともあり、自身の活動に一定の評価を与えられる日も時にはあります。

ただ、忘れてはならないのは、ZOOMで繋がっているのは「日本中の方」ではなく「安定した インターネット環境とZOOMの操作ができる日本中の方」であること、です。 先日もある新聞で「経済的な理由でスマホの回線の契約を打ち切られ、日に何度か街中の WIFIスポットに行ってネット接続し、LINEやメールを確認し送受信を行っている方」が おられるという報道を目にし、衝撃を受けました。

「本当に宗教者が向き合わねばならない対象」は実はそちらでないかと、強く感じております。 現状はそういった方との直接交流はなかなかかないませんが、コロナ禍が終息した折には 積極的にお話をさせていただくよう、心がけていきたいと思います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)