宗教アカウンタント通信No.131


〇僧侶のセルフマーケティング


〇僧侶のセルフマーケティング

10月30日に、「H1 法話グランプリ」というイベントが開催されました。

宗派を超えて、8組(9名)の若手僧侶達が参加し、イベントのために用意したとっておきの法話を制限時間(10分)の中で披露。会場審査員および専門審査員が「もう一度会いたい」と思った僧侶に投票し、グランプリと審査員奨励賞を選出する、というものです。

今回優勝した融通念仏宗の僧侶は自身の檀信徒さんとのやり取りの経験から「咲いた花見て喜ぶならば咲かせた根元の恩を知れ」という格言を落語家のような滑らかな語り口で紹介し、幅広い支持を得ていました。

もちろん法話や僧侶に順位を付ける目的のイベントではなく、8組9名の僧侶はそれぞれ思い思いの演じ方、語り方で、それぞれの宗派の教義、宗祖の教えを紹介していました。筆者はインターネットの動画配信で見ておりましたが、3時間を超える長さをまったく感じさせない、楽しく、またためになる催しでした。

教化(教えを広めること)は仏教伝道の基本です。そして、同じ宗派の僧侶が100人いたとしたら、その100人の教化の方法、ツールや語り口は100通りです。

筆者は以前から「これからはご葬儀、ご法事の依頼先として、寺でなく僧侶が選ばれる時代が来る。インターネット等を通じて檀信徒のみならず広く社会に自身の強みをしっかりアピールすることが、結果的には当人のみならず当該寺院の経営にも寄与する」と申し上げてきました。

SNSの普及、発展とともにその傾向は増しています。以前の法話グランプリで審査員奨励賞を受賞したある僧侶は毎朝ライブ配信で法話を続け、現在はTikTokで80万人を超えるフォロワーを得ています。

もちろん、もっぱら地域の中で檀信徒さんに向けて地道に語りを続けていく、という方法もあるでしょうし、それはそれでひとつの生き方ではあります。

しかしながら、この混沌とした世情の中で、世に伝えたいことがあるのであれば、悩める人々の力になりたいのであれば、ひとりでも多くの人に自らの存在と訴えたいことを知らしめる方向での試みも行っていくべきではないでしょうか。

筆者の周囲でも僧侶が次々とyoutubeチャンネルを開設しています。彼らの試みを応援するとともに、筆者も今、少しでも人々の役に立つために、社会に向けて、どのようなツールを用いて、何を、どう伝えていくべきか、改めて考えてみたいと思います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)