宗教法人アカウンタント通信No.136〇寺院の社会貢献〇寺院の社会貢献 昨年の12月に、全日本仏教会と大和証券の共同調査による「仏教に関する実態把握調査(2021年度)報告書〜お寺のSDGs 「社会貢献活動」と「DX」 等〜」が発表されました。コロナ禍を受け大幅に変容した寺院の活動、また一般生活者の方と寺院との距離感について、興味深い報告がなされています。 調査の全容は全日本仏教会のWebサイトで読むことができますが、その中から今回は、社会貢献活動についての統計を取り上げてみます。 まず、お寺の役割として期待されている(「是非寺で取り組むべき」とされた)活動として、「社会貢献(約21%)」は「亡くなった方の供養(73%)」「先祖供養(64%)」などの「供養」と比較するとかなり低い評価になっています。 複数回答とはいえ、「寺は故人やご先祖を供養するところ」という考えが過半を上回っていた点は想定通りではあります。一日葬や家族葬、永代供養墓の普及など、その形はしだいに変容しつつありますが、これまでと変わらず、ご葬儀、ご法事を中心とした供養を丁寧に行っていくことを心掛けてまいりたいとの思いを強くしました。 さて、「お寺で取り組むべき社会貢献活動」として、「伝統文化・芸術の保存」、「災害時の避難場所(の提供)」は、およそ6〜7割の方が、「取り組むべき」と答えています。「終活の支援(エンディングノートなど)」に関しては「菩提寺(お墓を取っているお寺)あり層」と「菩提寺なし層」でそれぞれ60%、53%と、多少の差が生じています。 「伝統文化・芸術の保存に取り組むべき」という意見に関しては、一般の方にとって寺院が「心のよりどころ」というよりも、「有形無形の文化的資産を継承していくべき主体」として評価・期待されていることを示していると考えます。また「災害時の避難場所(の提供)」には、宗教的な色彩とは関係なく、「大きなスペースがあるのだから万一の際には提供して欲しい」という切実かつ真摯な思いが窺えます。 また、「終活の支援(エンディングノートなど)」について、「菩提寺なし層」であっても5割を超える方が希望しているという事実は、少々意外ではありましたが、寺院関係者にとってはたいへんありがたく、これからの寺院の方向性に一定の示唆を与えている気もしました。 「お寺が取り組むべき終活の支援」の具体的内容は今回の調査では「エンディングノート」以外には挙げられていませんが、筆者の経験から推測すると、 ・墓所の準備や移転(墓じまい) ・代替わり後の寺との付き合い方 ・葬儀の事前準備(生前戒名授与、葬儀社の紹介依頼等) といった相談事への対応、アドバイスあたりが多くなると思います。「エンディングノート」に関しては、ノートの全般的な書き方指導というより、葬儀や埋葬に関する希望をいかに書いておくか、についての相談が多くなると思います。 いずれにせよ、寺院と一般の方のコミュニケーション、会話の場が増えるのは望ましいことです。僧侶の側も葬儀や年回法要、お彼岸やお盆の供養に限定することなく、「終活一般の広範な基礎知識を身につける」「信頼できる士業の先生方とのネットワークを構築する」などのミッションに、平素から励むことが必要であると考えます。 「坊さんはただお経を読んでいればよい」という時代の終焉は、すぐそこまで来ていると思っておくべきかもしれません。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
|