宗教法人アカウンタント通信No.137〇盗難被害〇盗難被害 先日のとある日曜日の夕刻、本堂の外の賽銭箱の小銭を回収しようとしたら、引出しごとなくなっていました。 引出しは真横から引き出す形状のもので、よそのお寺様も多いと思うのですが、引出しに鍵をかけておくとかえって鍵を壊されるのが定石なので、鍵はかけておりませんでした。 拙寺ではお賽銭はこまめに回収し、鍵はかけずにおくことで、賽銭の盗難の被害を最小限にとどめる、という対策を用いておりました。 以前ですと、賽銭箱の引出しを出し、お賽銭をその場にぶちまけ、引出しをその場に放り投げて帰っていく、というのが、拙寺に賽銭を盗みに来た人のやりかたでした。 ところが今回は、そこそこの大きさの引出しを、どこかに持って行かれました。もちろん警察に連絡し、被害届を出しました。引き出しが近所の空き地か公園あたりに捨てられている可能性もありますが、警察からまだ連絡はありません。 どのような経緯から今回そのような行動に至ったのかはわかりません。 本当にお金がなくなってやむにやまれず、ということなのかもしれませんが、お寺への信心、あるいはなにがしかの願いことが成就しますようにと多くの檀信徒様、拝観者様が納めたお賽銭を箱ごと持って行って、良心がとがめることはなかったのでしょうか。残念に思います。 筆者の寺が所属する真言宗には、「日々の暮らしの中で、心がけたい10の項目」という教え、「十善戒」があります。 身(しん) 身体の行い 不殺生 不偸盗 不邪婬 口(く) 言葉の行い 不妄語 不綺語 不悪口 不両舌 意(い) 心の行い 不慳貪 不瞋恚 不邪見 不偸盗(ふちゅうとう)、これが「ものを盗んではいけない」という教えです。仏教の教えを持ち出すまでもなく、人のものを取っていい道理などありません。二度と同じふるまいをしないことを祈るのみです。 お賽銭のうち、100円玉以上の硬貨や紙幣は一週間前に回収していたので、さほどの被害はありませんが、賽銭箱の引出しを再度作ることになり、専門店に頼んで採寸から始めています。 しかしまた盗まれる可能性もあるので、いかに再発防止策を講じるか、頭を悩ませています。 具体的な対策はセキュリティの問題もあるので詳しくは申し上げませんが、次回は犯人を捕まえたい、というより、盗難への抑止力を高める方向性での対策を考えています。 いずれにせよ、寺社に限らず、全国のいかなる宗教施設においても、このようなことが起きないことを願ってやみません。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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