宗教法人アカウンタント通信No.140


〇独居について


〇独居について

最近、拙寺の檀信徒さんで多くなっているのが、「独居の方の旅立ち」です。中でも、発見が遅れ、亡くなってから数日が経過した方のご葬儀をさせていただくことが増えています。

ある調査によれば、独居の方のご遺体発見までの日数は、女性で50%、男性で38%が3日以内。つまり、独居されている女性の5割、男性に至っては約7割が、4日以上経過してから発見されているそうです。拙寺においても、あるお檀家さん(70代男性)の場合、没後相当の期間が経過していたためにご本人であることの確認に時間がかかり、いつ亡くなられたか推定もできず、「死亡日:〇月下旬」という死亡診断書が交付されました。

少し前の統計になりますが、「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(内閣府)」において、以下のデータが出ています(本格的な高齢期を迎える前からの年代による意識の違い等についても把握するため、60 歳以上の男女を調査対象としています)。

・近所の人とのつきあいの程度について、「あいさつをする程度」が 35.3%で最も多く、「親しくつきあっている」(30.0%)と「あいさつ以外にも多少の付き合いがある(相手の名前や家族構成を知っていたり、物の貸し借りや趣味を共有しているなど)」(29.1%)が同程度。

 女性は「親しくつきあっている」が 33.2%と、男性(26.3%)に比べて高い。

 男性は、60 代後半から 70 代前半で「親しくつきあっている」が約2割(それぞれ 21.1%、21.3%)と低い。女性は年齢が上がるほど「親しくつきあっている」が高い。

 健康状態別では、健康状態が「良い(計)」の「親しく付き合っている」が 34.7%で、「良くない(計)」の 21.7%に比べて高い。

・親しくしている友人・仲間をどの程度もっているかについては、「普通」が 48.8%、「沢山もっている」は 24.1%、「少しもっている」が 21.0%で、93.9%が親しい友人・仲間をもっている。

・別居の子供がいるが、子供と会ったり連絡を取る頻度は、「週に1回以上」が 34.2%で最も多く、次いで「月に1〜2回」(26.5%)、「ほとんど毎日(21.8%)の順。

「ほとんど毎日」「週に1回以上」は、女性(それぞれ 25.8%、37.0%)が男性(それぞれ 17.5%、31.3%)より高く、「年に数回」は男性(17.5%)が女性(9.1%)より高い。「ほとんど毎日」は、どの年代でも女性の方が高いが、65〜69 歳は男女差があま りない。

 健康状態別では、「ほとんど毎日」+「週に1回以上」の計は、良い層は 56.3%、良くない層は 49.2%で、健康状態にかかわらず約半数が週に1回以上連絡を取っている。

この調査では、まだ高齢者と言えない年齢層も対象にしていることもあり、「孤独」を想起させる印象はそれほど強く浮かび上がってはきません。ただ、「ご近所やお子さんと緊密に交流しているわけではない方が少なからずおられる」という事実は、留意しておくべきものと考えます。

もちろん、ライフスタイルは人それぞれ自由であり、他者との交流をせず、おひとりでお暮らしになるという生活様式も、他人から否定されるような性質のものではありません。仏教においても、「犀(さい)の角のようにただ独り歩め」という言葉があります。

ただ、歩むことも、真理を求めて突き進むことも、心身が健康であればこそ実現できるものです。時節柄、悪しき疫病もまん延しています。重篤な状況に陥ったときに発見が遅れ、取り返しのつかない事態になっては元も子もありません。

不調を感じたときにすぐに助けを求められるご家族、ご友人との関係性の維持、連絡体制の確認を、今一度お願いしたいと思います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)