宗教法人アカウンタント通信No.145〇卯年の年頭に〇卯年の年頭に あけましておめでとうございます。本年も本メールマガジンをご愛読いただきますよう、よろしくお願いいたします。 今年は卯年。卯年生まれの方の守り本尊は文殊菩薩(もんじゅぼさつ)。「三人寄れば文殊の知恵」という格言があるように、知恵の神様として学業成就、合格祈願にご利益があると言われる菩薩です。 ただし、本来は学問などの知恵を司るのは虚空蔵菩薩であり、文殊菩薩は智慧(ちえ、物事のあり方を正しく見極める力)を司っています。一般的には釈迦如来の左脇侍として、右脇侍の普賢菩薩と共に三尊で並ぶことが多いのですが、単独で祀られることもあります。 さて、文殊菩薩を篤く敬った僧侶の一人が、忍性(にんしょう)です。 忍性は、鎌倉時代の真言律宗の僧です。貧しい民やハンセン病の患者さんなど、社会的弱者の救済に尽力したことで知られます。といっても、忍性は師僧の叡尊(えいそん)とやや立場を異にし、恵まれない方を含めたすべての人々の救済に尽力しました。生涯で草創した伽藍は83ヶ所、人に与えた衣服は33000領、架橋した橋は189、掘った井戸は33にのぼるとされています。 また彼が鎌倉に建立した療病施設「桑谷療病所」では、収容した人約6万人のうち、8割の患者が生存したといわれています。 さらに「極楽寺坂下馬病屋(極楽寺は北条家の菩提寺です)」という日本初の動物医院を開き、数千頭の牛、馬にも祈りをかけ、薬を与えた、とも言われています。 仏典を丹念に読み、長年にわたり真言を唱え印を結び、修行を続け悟りを開いて仏教の奥義を人々に伝えた僧侶は大勢いますが、ここまで社会に飛び込んでいった僧侶となると、右に出る者はなかなか浮かびません。「スーパーボランティア僧侶」「日本のマザーテレサ」などの異名を持つ所以もわかろうというものです。 今更ですが、宗教の役目は、「困っている人、悩んでいる人の心に寄り添い、気持ちの安寧に寄与すること」です。「悪い相が見える、何かの祟りだ」などと脅したり、高額な布施を要求することではありません。 疫病は未だ世にはびこっており、物価高とあいまって、働くこと、生きていくことの厳しさ、生きづらさを抱えて苦悩しておられる方も少なくない時代です。 そして、本来あるべき役割とは異なる意味で「宗教」という言葉が否定的なイメージとともに社会に溢れ、ともすれば従来型の仏教を含めたあらゆる宗教が世間から疑念の目で見られている懸念も感じます。 我々僧侶ひとりひとりが気持ちを新たに、宗教者の本分に立ち返って、ひとりでも多くの方とご縁を結び、お話をさせていただくことを目指したいと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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