宗教法人アカウンタント通信No.147


〇東日本大震災から十二年


〇東日本大震災から十二年

さる3月11日は、東日本大震災から12年、仏事で申しますと十三回忌の日でした。筆者の寺近くの大きな寺院でも十三回忌法要が執り行われ、筆者も出仕し、震災で亡くなられた方のご冥福を改めてお祈り申し上げました。

12年を経過してもまだまだ震災の影響を受けている方はおられます。筆者の寺に先日お墓を取っていただいた方は、福島県の浪江町にご先祖様の墓所があるのですが、原発事故の影響で長年、墓所に立ち入ることが許されませんでした。

近々、当該地域が「帰宅困難地域」の解除がなされる予定で、その折には墓所からご遺骨を取り出し、埼玉にある筆者のお寺に改葬をされるご希望を伺っております。十二年間ご墓参のかなわなかった施主様のお気持ちを考えると、言葉もありません。こちらの墓所に移られるご先祖様、そして施主様ご家族の安寧を願うばかりです。

そして、忘れてはならないことは、行方不明の方がいまなお2500人ほどおられる、という事実です。2021年3月からの1年間で、新たに3人のご遺体の身元が確認されたそうです。「ご家族がいまだ行方知れずという方の心持」というものもまた多様で、お気持ちを切り替えられている方もおられれば、いまもどこかにいるのでは、という思いを抱かれている方もおられます。これはもう、他者が口をはさむべきものではありませんし、十三回忌のような法要に出たくない、という方のお気持ちも理解できます。

我々宗教者の一部は震災直後から現地に入り、さまざまな働きかけをしてきました。私も何度も被災地に入り、お話を聞かせていただきました。お子さんたちとはボードゲームを楽しみました。どの程度お役に立てたかはわかりませんが、いくばくかでも現地の皆様方のお心の安寧に寄与できたのであれば幸いです。

我々としては、「被災された方」というくくりはいったん脇に置き、Aさん、Bさん、Cさん、それぞれのご様子やご意向をしっかり受け止めて、お心に寄り添い、少しでもお気持ちを安らげるお手伝いをすべく、努力してまいりたいと思います。

三陸の海の底にはもう風を起こすことなき扇風機が棲み 泰源


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)