宗教法人アカウンタント通信No.149〇LGBTQの方たちへの対応について〇LGBTQの方たちへの対応について LGBTQ。この言葉もすっかり社会に広まり、理解も深まってきました。 念のために申し上げますと、この言葉は同性愛の人、両性愛の人、カラダの性とココロの性が不一致な人、性的指向や性自認が定まらない人の総称です。これらの方は全人口の8〜10%にのぼるとも言われておりますが、我が国では法制度面の対応が著しく遅れており、早急なキャッチアップが望まれ、自治体レベルでもさまざまな改革が始まっています。 日本の仏教においてもこれらの方々の存在をまったく意識することなく、さまざまなしきたりが継承されてきました。その代表的なものが、お戒名です。 ご存じの通り、お戒名は仏門に入ったものが授けられる名前で、筆者の宗派では男性は「○○〇〇居士」「○○○○信士」、女性は「○○○○大姉」「○○○○信女」というかたちのお戒名を授与するのが一般的です。つまり、「すべての人はどちらかの性を持ち、その性はカラダ・ココロで統一されている」という大前提のもとにしきたりができあがっているのです。 したがって「カラダは男性だけどココロは女性」(もしくはその逆)の方にとっては、きわめて納得しがたい現状であると言わざるを得ません。 たとえば「ココロは女性」の方が「居士」というお戒名を授与されたら、どうでしょうか。生前授与しろ没後の授与にしろ、どうにも納得しがたい違和感を抱えたままで浄土に向かわれる、ということになり、成仏どころではなくなってしまうのではないでしょうか。 これに関しては一部の寺院で「○○○○信人」などの「性を意識させないお戒名」の授与が検討されています(これはこれで「新たなラベリングにつながるのでは」という懸念もあります)。また生前に「ココロの性」を告知していただくことによりそちらの性に寄せたお戒名を授与することも、寺院によっては対応可能です。 また全日本仏教会では、性の多様性を含め仏教の持つ平等性を表現する「レインボーステッカー」を作成し、寺の掲示板やWebサイトでの掲出を推奨しています。遅まきながら取り組みがはじまっていると言えます。 そして、「LGBTQならではの生きずらさ」に関してのお悩み相談。まだまだ相談相手として宗教者が受け入れられているとは思えません。 筆者の寺では、数年前は男性だった方檀家さんある日のご法事に女性らしき服装をしておいでになったという事例もあります。すべての人が気持ちよくお寺にきていただき、我々宗教者とフランクにお話をしていただくために、今何をすべきか。模索は続きますが、歩みを止めることなく考えていきます。 その際なによりも大切なのは「LGBTQの方の対応はこれ」などとマニュアルを定めることではなく、おひとりおひとりの事情をよくお聴きした上で、その方に寄り添った対応をその都度行うこと」であろうと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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