宗教法人アカウンタント通信No.150〇LGBTQの方たちへの対応について(2)〇LGBTQの方たちへの対応について(2) 前号に引き続き、LGBTQ(性的少数者)の方への対応について考えていきます。 今回はまず、墓地の問題を考えます。これは「お子さんが居ない、つまり継承者がいないことが明らかであるカップルに、墓地管理者が墓地を売りたがらない」という問題です。 筆者の寺院の墓地もそうなのですが、継承者が途絶えて当該墓地が放置されてしまうことが、墓地管理者側の悩みです。もちろん相当の周知期間を置けば墓石の撤去はできるのですが、その場合の費用は管理者負担になります。 そのリスクを回避するために、「申込者様に万一のことがあったら、どなたが墓所を継承されますか?」と質問させていたくことがあります。この質問自体が、同性カップルの方を傷つけていたのではないかという反省がなされています。 こちらに関しての対策のひとつとして、皆様ご存じの「永代供養墓」という、新しい型の墓所が近年流通しています。こちらは「納骨後の墓地の管理は墓地管理者(霊園や寺院)が行う墓所」で、お彼岸やお盆の墓参、年回法要等も一切不要です。原則として年会費も発生しません。 この永代供養墓をご案内することで、「パートナーと一緒のお墓に入りたい」というご希望はかなえられると考えます。ただ永代供養墓はあくまで「合葬墓」であり、「ふたりだけのお墓」という意味合いは薄いかもしれません。その場合にはたとえば「永代供養型の樹木葬墓」などが選択肢になると考えます。 次に、実際にLGBTQの方の問題に真剣に取り組んでいる事例をご紹介します。 大阪府守口市にある、A寺。御住職は男性として生まれましたが、小学生の頃から心と体の姓の不一致に悩み続けました。阪神・淡路大震災を機に「己の心に正直に生きよう」と決めて2005年に僧籍を取得、その後2010年に性別適合手術を受け女性となりました。現在はお寺の住職としてLGBTQをはじめとする「生きづらさを抱えている人」の相談を受け容れています。 もう一件。埼玉県川越市のB寺。昨年5月に川越市でLGBTカップルの証明制度「川越市パートナーシップ宣誓制度」が始まったことを受け、こちらのお寺では『お寺で挙げる同性結婚式(LGBT WEDDING)』をスタートさせました。式は一般の仏前結婚式と同じ流れで行いますが、僧侶が身に着ける輪袈裟はレインボーカラーで、指輪の代わりに交換するのは、特注のレインボーカラーの念珠。おひとりおひとりの悩みに寄り添う、という思いをしっかり具現化しておられます。 こういった個々の僧侶の取り組みはまだ小さいものかもしれませんが、やがて大きな実を結ぶことを願ってやみません。筆者も僧侶のひとりとして、今何ができるか、何をすべきかと自問し続けていきたいと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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