宗教法人アカウンタント通信No.152〇葬儀・法事のデジタル対応〇葬儀・法事のデジタル対応 半年ほど前の話ですが、ある檀家さんが亡くなり、その方のご自宅でご葬儀(一日葬)を行いました。 その方は奥様と息子さんと娘さんがおられたのですが、娘さんがオーストラリアで10年ほど生活しており、現地の方と結婚してお子さん(故人のお孫さん)もいらっしゃいました。お仕事の関係でご葬儀への帰国もかなわなかったのですが、その際に当家から「ご葬儀の模様をリアルタイムでオーストラリアの娘さんに見せたい」というご要望をいただきました。 詳しく話を聞いてみると、そのお家はWi-Fiも完備していて、平素からインターネットでSkype等のツールを使い、オーストラリアのご家族とコミュニケーションを取っていたとのこと。それであれば、こちらとしては通常通り読経し引導もお渡しします、ご葬儀に参列されるご家族御親族と同様、住職(筆者)の姿を後ろから撮っていただくのであれば構いません、どうぞ(インターネットを通じて)ご参列ください、というお話をしました。 結果、当日は回線のトラブルもなく、しめやかにご葬儀を行うことができました。彼の地のご家族の方にも好意的に受け止めていただいたようです。 拙寺では上述の案件が最初だったのですが、実は仏教界では、コロナ禍の前からこの手の「ご葬儀・ご法事のデジタル対応」の話は時折出ておりました。筆者と同じ宗派のITに明るいある僧侶さんは、早くから本堂にWi-Fiを通し、朝の勤行の様子をライブ中継したり、遠隔地の檀信徒さんの墓参を住職自ら代行しその模様をリアルタイムでその檀家さんにお見せしたり、という試みを行っています。 こういった試み、数年前までは、「やはりお寺に来てもらわなくては始まらない、お寺という宗教施設の中でお香の香りを感じ、ご本尊を拝み、住職と顔をつきあわせ、お経を直接聞いてもらうことが大前提」という意見も多かったのですが、コロナ禍で様相は様変わりしました。 地域の移動が大幅に制限され、菩提寺と遠い場所に居住する親戚の方、あるいは体力的・身体的な問題で来寺が困難な方、などに向けて「リモート法要」が行われるようになり、街中の葬儀社も「葬儀のリモート対応」をアピールするようになりました。 さまざまな意見があることは承知していますが、個人的には「お寺に来ていただかないと何も始まりません」という時代は終わったのではないかと思います。リモート対応に限らず、檀信徒さんと菩提寺の心理的距離を縮めるためにできることを、引き続き模索していきたいと考えます。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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