宗教法人アカウンタント通信No.154


〇墓所の再販


〇墓所の再販

秋のお彼岸が終わりました。気候不順な中でのお彼岸でしたが、多くの檀信徒 さんが墓参にお見えになり、墓所は色とりどりの生花で埋め尽くされました。 毎年見る光景ですが、本当に心がおだやかになり、気持ちも浄化される感覚に なります。

さて近年、いわゆる「墓じまい(墓石を撤去してご遺骨を出し、他の墓所に再 度埋葬もしくは散骨すること)」の普及に伴い、「所有者の居ない墓所」が増 えてきております。 この「空き墓所」に関しては、外柵・卒塔婆立て・カロート(地中の納骨スペ ース)をすべて撤去し、完全な更地にして墓所購入の希望者さんにご提示する 場合と、墓石のみ撤去し外柵その他をクリーニングしてご提示する場合があり ます。

いうまでもなく、前者は一度完全に墓所をまっさらにしますので、次にその墓 所を取られる方は、自分が気に入った材質やデザインの墓石を、外柵、塔婆立 て、カロート込みでトータルで石材店に発注することになります。当然、建立 の価格は高くなります。 (この「墓石建立費用」に関しては石材店とお檀家さんとの直接契約に基づい て支払われますので、寺院はそこに介在しません) それに対して後者は、予めできている、クリーニング済の外柵その他を確認し て、それに合うような墓石を購入、建立します。 当然のことながら、こちらのほうが費用は数十万円安くなります。ただし、ク リーニング前にはそのカロートに、以前の所有者さんの御親族のご遺骨が入っ ていたことになります。

筆者の寺院では、基本的に後者(全撤去でなく、クリーニング)の墓所をまず ご提示します。いわば、墓所の再販とも言えます。ただし墓所を購入したきり で墓石はもちろん外柵も何も立てず、数年後に墓じまいをされる方もおられま すので、結果的に「更地」でのご提供となっている墓所もあります。 今まで多くの方とお話をして、この二つの形式の墓所をご説明すると、圧倒的 (感覚的に9割)程度の方が、後者、つまり再販形式の墓所を選択されます。

ある場所でこの話をしたところ、結構な割合の方が驚かれて「知らない人のご 遺骨が入っていたお墓に自分が入ることを躊躇う人はそんなに少ないのか」と 話されましたが、少ないです。やはり費用面の差が大きいことがその最大の要 因であろうと感じています。

もちろん寺院や霊園によっては「墓所返還に際しては全て撤去しお清めをして います。更地の状態でご案内しますのでご安心下さい」という文言をWebサイト に掲げ、更地アピールをされているところもあります。

これから墓所を探されるという方におかれましては、まずお目当ての寺院・霊 園に再販エリアはあるか、その場合、そのエリアは上述した「完全な更地」と 「外柵等クリーニング済」のどちらか(もしくは両方あるのか)を確認した上 で、ご家族ご親族の皆様とよくご相談の上、墓所購入を検討されることを、お 勧めいたします。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)