宗教法人アカウンタント通信No.155


〇月参り


〇月参り

月参りとは、毎月のご先祖のご命日に菩提寺の住職・副住職が檀信徒さんの自 宅に伺い、仏壇の前で読経するならわしのことで、大阪からはじまったという 説があります。 大阪では自宅で商売されていた方が多く、お寺に行ってお参 りが出来なかったためこのような習慣が定着したようです。

月参りを行っているか、どれだけの檀家さんの家に伺っているかは、宗派、地 域あるいはそれぞれの寺の事情によって異なります。ちなみに筆者の寺では月 参りはまったく行っておりません。特に理由はないのですが、先代住職の時か ら行っておらず、古くから寺を支えていただいていた地元の檀信徒さんも月参 りを受けいれる習慣がないので、行っていないのが実情です。筆者の寺の地域 においても多くの寺院が月参りを行っていないこともあり、正直、筆者もその 必要性に関してはあまり意識をしたことがありませんでした。近年では檀信徒 さんが亡くなられてから最初のお盆に行う「新盆供養」も寺での合同供養に参 加される方が多く、「ご自宅に人を入れるのは神経を使うし、いろいろと大変 なのだろうな」とも思っておりました。

ところが最近、関東圏以外に寺のある若い僧侶さんと語らう機会があって、そ の際に「檀家さんの家であるアクシデントがあった際に、すぐに菩提寺に連絡 をしていただいた」というお話を聞きました。我々僧侶の大きな悩みは「お檀 家さんが亡くなってから連絡をいただくことが一般的になっており、それ以外 の状況においては存在を思い出していただけない」というものなのですが、そ の若い僧侶さんや先代さんはおそらく、月参りという習慣を長く続けることに よって、菩提寺の存在を檀信徒さんの心に深く印象付けておくことができてい て、それによって(ご不幸でない)一大事の時にいち早く思い出していただけ たのだと思います。ちなみにその僧侶さんの地域では月参りの際に檀信徒さん からいただくお布施は必ずしもお金ではなくて、大根一本とかの場合もあるそ うです。

月参りをしていないと、正直、檀信徒さんとの関係が希薄になっていくなあと 思うことはあります。お盆やお彼岸の墓参の折に本堂に上がっていただいてお 話していただける方はまだいいのですが、そうでない方との会話は正直、ご不 幸の際、あるいはご法事の打ち合わせの際、にほぼ限定されてしまうのが実情 です。

そう考えてみると、月参りの重要性はきわめて大きい気がします。毎月決まっ た日に檀信徒さんの家に出向き、読経をして、その後5分でも10分でも世間 話をする。そういったやりとりを積み重ねていくことが、信頼関係の醸成に繋 がっていくのだと、改めて感じました。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)