宗教法人アカウンタント通信No.158〇宗教統計調査〇宗教統計調査 あまり知られていないのですが、文部科学省は毎年「宗教統計調査」という調査を行い、統計データを発表しています。直近分では、2022年末時点でのデータが、2023年12月に公表されました。 詳細は https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa07/shuukyou/gaiyou/chousa/1262860.htm を参照いただければと思いますが、かなり気になるさまざまなデータが出ています。 1.宗教法人数 2013年から2022年までの宗教法人数の推移を見ると、包括・非包括を合算した宗教法人数は、2013年の181,961法人から2022年には179,339法人と、2000法人以上減少となっています。特にここ3年は、2020年が180,544法人ですから1000法人以上急減しています。 2.信者数 次に信者数ですが、こちらも10年間で190,176,262人から162,991,299人と、3000万人弱の減少となっています。当然、複数の宗教、宗派の信者となっている方が相当数おられることを前提にした統計です。こちらはそもそも各宗教によって「信者」あるいは「氏子」の定義が異なりますのでそもそもの数の信頼性に若干の疑問がありますが、それでも、故人を含むとはいえ、1割以上の方がどこの宗教・宗派の信者でもなくなっている事実は驚愕に値します。 3.宗派別法人数 伝統仏教系の宗教法人数では、曹洞宗(14,462)、浄土真宗本願寺派(10,131)、真宗大谷派(8,504)、浄土宗(6,942)、日蓮宗(4,932)といった順になります。ちなみに現在閲覧できる範囲で最も古い2016年のデータでは、曹洞宗(14,536)、浄土真宗本願寺派(10,243)、真宗大谷派(8,643)、浄土宗(6,996)、日蓮宗(4,946)といった順になります。多くの宗教法人(寺院)を抱える宗派でさえ、軒並み法人の減少、つまり法人格の返上や統廃合という対応を迫られているという事実が浮かび上がります。ただし、法人の減少の主因が「後継者の不在」なのか、「信者数の減少等による法人経営の悪化」なのか、あるいはそれ以外の要因なのかは、今回の調査からは判断できません。 4.宗派別信者数 同じく伝統仏教系の信者数ですが、こちらも多い順に見てみます。浄土真宗本願寺派(7,753,864人)、真宗大谷派(7,276,697人)、浄土宗(6,021,900人)、曹洞宗(3,582,780人)、日蓮宗(3,223,484人)。2016年のデータでは、浄土真宗本願寺派(7,922,823人)、真宗大谷派(7,918,939人)、浄土宗(6,021,900人)、曹洞宗(3,511,798人)、日蓮宗(3,846,041人)となっています。同じ信者数を申告している浄土宗以外の宗派はいずれも信者を減らしています。なお曹洞宗について、法人数に対して信者数が少ない、つまり1法人あたりの信者さん(檀家さん)が他宗に比して少ない、という特性は以前から指摘されています。 さて、ここまで見てきたように、中・長期的に見ても仏教系の宗教法人を取り巻く環境は厳しくなっていると言えます。もちろん各宗派もすでにさまざまな施策を導入しています。たとえば浄土真宗本願寺派は希望する末寺に対して大手シンクタンクによる「寺院診断」を無償で実施しています。またその他の宗派でも、「修行時の剃髪に関する柔軟な対応」「本山以外の道場での修行の認可」など、他の職業に就きながら教師資格を得たい人のための運用を始めているとこともあります。 1000年も前に悟りを開いた各宗派の開祖や高僧とは環境が違います。令和の時代に合った寺院の姿を模索し、本山、末寺一体となった「生き残るための取り組み」が求められていると、筆者は感じます。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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