宗教法人アカウンタント通信No.160〇お骨仏〇お骨仏 おこつぼとけ、あるいはおこつぶつ、と読みます。耳慣れない言葉かもしれませんが、定義としては「遺骨を粉にしたものを集め、コンクリートで固めて作った仏像」となります。 有名なのは大阪市天王寺区にある浄土宗の一心寺の阿弥陀如来像で、明治時代から10年ごとにご遺骨から阿弥陀如来像をお造りしています。戦前の分は焼失しましたが、現在は昭和23年以降に造立された8体が祀られています。 比較的安価でご遺骨を供養できることもあり、関西ではきわめて有名な墓所となっており、特に地方にお墓を持ったまま一部を分骨して大阪の墓所に納め、頻繁にお墓参りしてご供養したい、という方たちのニーズに合致して、200万柱にもおよぶと言われるご遺骨を預かり、仏様を造ってきました。 しかしながら近年、本来の目的と異なる「墓じまいによる改葬先」「低コストで行える埋葬」としてのご遺骨の持ち込みが増え、寺院側が対応しきれなくなったとして、令和3年からは持ち込める骨壺のサイズを直径9センチ、高さ11センチ以下に制限しています。 こういったお骨仏は全国的にも静かな広がりを見せており、筆者の近隣の寺院でも先般、700体のご遺骨を固めたお骨仏が完成、彩色を経て開眼(魂入れ)の儀式が執り行われました。お檀家さんたちも仏様の威容に目を見張っていました。お骨仏は、従来別のものとして解釈されがちな「ご先祖様に思いをはせる」と「仏像に手を合わせる」という行為が合体した供養のかたちで、通常の個人墓の建立、埋蔵に比べた際の経済的なメリットとあいまって、これからの普及が予想されます。 特に菩提寺側にとっては、「墓参にはおいでになるがご本尊などの仏様には手を合わせずにお帰りになる」という檀信徒さんの姿に多少の気がかりを抱えていることもあり、これからの檀信徒さん対応の新たなかたちとしても、注目したいところです。 全骨をお骨仏にされる場合には永代供養墓や樹木葬と同様に「〇〇家の墓」という大きなモニュメントが存在しないという形式になりますので、その部分で引っ掛かりを感じる方もおられるかもしれません。また一心寺のように「安易な埋葬の手段として受け止められる」という懸念も存在します。 ですが、人々のライフスタイルや家族のありかたの変容にあわせて、さまざまなご供養のかたちが出てくることは、決して悪いことではないと思います。大事なのは、ご先祖様を供養するこころであり、これだけはお孫さん、曾孫さんの代になっても、それぞれのご家庭で継承していっていただければと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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