宗教法人アカウンタント通信No.162〇生成AIと仏教〇生成AIと仏教 chatGPTに代表されるいわゆる生成AI、つまり「深層学習や機械学習 の手法を駆使して、テキスト、画像、音楽、ビデオなどのデジタルコンテンツ を自動で生成する技術」が大ブームとなっています。 活用の仕方によっては働く人の生産性や労働効率を著しく向上させることが 期待される反面、生成された情報の真偽性やオリジナルのコンテンツを制作 した人との権利関係などの問題も指摘されています。 先日、仏教関係者を含むネット上のカジュアルな集いにおいて、 「テクノロジーと仏教」に関する意見交換が行われました。 その際ある方から、「宗教者がしばしば問われる、宗教、死、生きずらさ、 人間関係等に関する悩み相談や質問を打ち返すAIも作れるのではないか」 といった意見が出て、胸を突かれました。 というのは、以前も申し上げたかもしれませんが、一部の宗教者がこのような 相談・質問に真摯に答えるあまり心身がいっぱいになってバーンアウト (燃え尽き)状態になるケースが発生した事例が昨今話題になっているからです。 つまり、しばしば宗教者が問われ、ある程度汎用性を持つ「問い」や「相談」 に関しては、「AIブッダ」的な生成AIがまず答える、というシステムは 有効でないか、と考えました。 それにより、宗教者にとってはとっかかりの質問に対応する負荷が軽減される。 一方質問する人にとっては実際の宗教者の知見、繁忙度やメンタルの安定度、 思想の微妙なバイアスに左右されない標準的な回答を得られる。 双方にメリットがあるのではと思います。その次の段階の個別具体的な悩みに 関してはきちんと宗教者が向き合う、というところまでがセットです。 もちろん、リアルな宗教者が答えることに意味がある、宗教者たるもの昼夜を 分かたず衆生に寄り添い導いてしかるべきである、というご意見もありますし、 現代においてもそれを実践されている宗教者もおられます。 ただ、「燃え尽きても仕方ない」という考えは極端だと思いますし、 現代においては宗教者もオンオフの切り替え、休息の時間を持つことは重要で あると思います。そして何より、これだけ情報が氾濫している時代において 衆生の皆様を導けるに足る有益な情報を摂取し、蓄積できている自信は、 少なくとも私にはまったくありません。 このような考えの行き尽く先には「宗教者がAIに取って代わられる」という 展開もあり得ますし、「人間とはなにか」という根源的な問いにもつながります。 簡単に答えの出る問いではありませんので、思索を続けていきたいと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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