宗教法人アカウンタント通信No.166〇法事をすすめる〇法事をすすめる 先日、寺院運営の専門誌にこんな見出しの記事が載りました。 「若い人に法事をすすめるならどうしたらいいか その成功実践」 おやっと思われた方もおられたかもしれません。法事とは、言うまでもなく亡くなられた方の四十九日、一年後の一周忌、二年後の三回忌、六年後の七回忌などの追善供養の行事のことです。予め打ち合わせて決めた日に檀信徒さんが菩提寺に行き、僧侶の読経と法話を聞き、その後墓参をする。これが法事です。 この「法事」が、さまざまな理由で行われなくなってきている、ではどうすればいいのか、成功している寺院はどのような工夫をしているのか、という紹介記事でした。 「そもそも法事は決まった年に行うことになっているものではないのか」そうお思いの方も少なくないかもしれません。ところが 昨今、このご法事を行わない家庭が増えています。その経緯としては、コロナ禍以降、集団での集まりが回避される傾向が続き、コロナ収束に近づきつつある現時点でもその流れを引きずっているということが言えます。 もうひとつ、「死の個人化」、すなわち「亡くなった方を家族からある程度切り離して考える」という傾向に近年拍車がかかっていることも否定できません。 菩提寺にとっては法事を行っていただいてお布施を納めていただくことはいわば寺院経営の生命線であり、せめて三回忌、七回忌、十三回忌ぐらいまではきちんと行ってほしいというのが率直なところです。しかしながら、回忌にあたる年であってもご連絡をして来られないお檀家さんが多いのが実情です。そもそも回忌であることを忘れておられる方、覚えていてももろもろのご事情で法事を行わない方など、その理由はさまざまだと思います。 もちろん寺院側としても様々な対策を練っています。檀家さんのご不幸の発生した日から計算して年回法要の年にあたる時期にははがき等でご連絡する、というのが一般的な対処の仕方です。さらに進んだ寺院では、ご法事の年であることをお知らせするとともに、寺院のWebサイトにご法事の申込フォームを置いて、希望日や人数、お塔婆を上げる方の名前などを入力してもらう形式をとっています。 筆者の寺は 「ご法事の開催を寺側から催促するのは少し違うのではないか」と考え、現状、このような告知を行ってはおりません。ただ昨今、法事の催行回数がかなり減ってきており、このような形も導入せざるを得ないのではないか、という風にも最近考えております。 もちろんその際には「あなたの家は今年お父様の七回忌です、法事は必ず行わねばなりません」といった高圧的な物言いは厳に慎まねばなりません。ご法事の意味、意義から丁寧に説明し、必要であれば対面やお電話で丁寧に説明をする、そういった取り組みから再構築していかねばと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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