宗教法人アカウンタント通信No.167〇檀信徒さんと向き合う〇檀信徒さんと向き合う お盆、お彼岸など、檀信徒さんとのやりとりが多くなる時期が一段落しました。檀信徒さんとのコミュニケーションについて筆者が最も重視していること、それは「聞き役に徹してひたすら話を伺い、「話しやすいお坊さんだ」という印象を持ってもらい、何か困ったことがあったときに一番に思い浮かべてもらう存在になること」です。 もう10年以上前になりますが、あるお檀家さんからお電話がありました。昨夜、思わぬかたちで20代のお子さんを亡くされて、お通夜と告別式の日程を相談したいとのこと。その時に感じたのは、「お子さんのことで悩まれている時点で、なぜ相談いただけなかったのか」ということでした。そこには筆者という僧侶が「お経を読み、儀式をつかさどる人」、もっとありていに言えば「拝み屋」としてしか認識されていないという厳然たる事実がありました。 「そもそも宗教者には悩み事の相談相手としての期待などしていない」というご意見もあるかもしれません。しかしながら現代ほど「生きずらさを抱えている人」が多い時代は今までなかったのではないでしょうか。 厚生労働省の統計によれば、仕事によってうつ病などの精神障害を発症し、2023年度に労災認定を受けたのは883件。前年度から173件増加し、統計を始めた1983年度以降の過去最多を5年連続で更新したとのことです。 今日もSNSにはさまざまな心のつぶやきで溢れています。深刻なものも少なくありません。そんな時代にあって、宗教者はもっと役に立つべきではないか。お困りの方の役に立てることがあるのではないか、そんな思いに駆られています。 そのために、とりあえずなすべきは、前述した「困ったことがあったときに思い浮かべてもらえる存在になること」そしてもうひとつは「相談をいただいた際に、できる限り相談者さんに寄り添い、最適解とは言わないまでも、お気持ちが少しでも楽になるような言葉をかけられるよう準備をしておくこと」だと考えます。 前者に関しては折に触れて「どんなことでも遠慮なく相談してください」とアピールしておく。後者に関しては幅広い分野の書籍を読み、社会的に評価の高い宗教者やさまざまな分野の専門家の話を積極的に聞き、可能であればコネクションを確立、維持しておく。そんな取り組みが必要ではないかと思っています。 このような時代であるからこそ、宗教者は必要とされている。そう信じて、研鑽を積んでいく所存です。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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