宗教法人アカウンタント通信No.169


〇宗教法人の事業


〇宗教法人の事業

新年のお慶びを申し上げます。本年も本メールマガジンをご愛読いただきますよう、よろしくお願いいたします。

令和6年1月、文化庁宗務課から「宗教法人が行う事業に関する調査報告書」が発表されました。詳細は文化庁サイトhttps://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/93995201.htmlを参照いただきたいのですが、それによれば、仏教系の宗教法人で事業(宗教法人の本来の宗教活動と別に行われている公益事業、および公益事業以外の事業(収益事業等))を実施しているところは全体の約15%。事業を実施している理由としては「宗教法人の財政基盤を強化し宗教活動に資するため」「社会や地域住民の要請のため」がそれぞれ54.7%、37.0%(複数回答可)となっています。

具体的な活動としては「駐車場」「貸地・貸間等の不動産業」がそれぞれ34.6%、29.9%で1位、2位を占めています。そして、宗教法人の事業に供されている土地の所有形態としては 、「宗教法人の自己所有の土地」が85%となっています。

つまり、宗教法人の事業はその法人が持つ土地、建物等の不動産を活用することがほぼ前提となっていると言えると思います。推測ですが、「宗教法人の所有する土地、建物のいくばくかを宗教活動から切り離して事業に充当している」、そんな状況が見て取れます。

これらの背景には言うまでもなく、「人々の宗教離れ等に起因する本来収入の減少」という現状があります。人口減少の影響がどのように出ているか、という問いに対して、50%以上の寺院が「祭、法要、礼拝等の宗教活動の縮減」「信者等数の減少」「宗教活動(一般会計)収入の減少」といった項目にあてはまると答えています。

もちろん寺院に限った話ではありませんが、これからも続くと予想されるこの国の人口減少の中で、収入基盤の多様化は大きな生き残りのカギとなります。多くの寺院は檀家さんのお墓やご遺骨を守っていくという使命を持っているので「ビジネスモデルの転換」は事実上困難であるため、本来の宗教活動を行いながらさまざまな「副業的事業」を模索していくことになりますが、宗教法人としての公益性に鑑み、地域社会や周囲との調和も意識して、収益優先でない、「あたたかな、人間味のある、助けを必要としている人に喜んでもらえる事業」を考えていくべきではないかと思います。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)