宗教法人アカウンタント通信No.170〇宗教法人のための運営ガイドブック〇宗教法人のための運営ガイドブック 令和5年11月に、文化庁宗務課から「宗教法人のための運営ガイドブック」というリーフレットが発行されました。文化庁のWebサイトからダウンロードしていただくこともできます。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/kanri/pdf/93980601_01.pdf 内容的には主に宗教法人の理念のおさらい、宗教法人法の条文の解説や提出書類の記入方法等が中心ですが、きわめて平易で読みやすく、平素の宗教法人経営にも役立つ内容です。二か所ほど抜粋してみます。 **************************************** (自治の尊重と自律性への期待) 宗教活動の自由を最大限に保障するため、役員の資格・任免、必要な機関の設置、財産処分の方法等についても、できるだけそれぞれの宗教法人の特性に応じた自主的、自律的運営に委ねています。 (性善説) 宗教は国民の道徳基盤を支えるものです。したがって、宗教法人には非違行為はないという考え方から、財産の処分等について、所轄庁(都道府県知事又は文部科学大臣)の許可等は必要ありません。 ***************************************** 「自主的・自律的運営に委ねられる」「国民の道徳基盤を支える」「非違行為(法令や就業規則などの服務規定に違反する行為)はないという考え方」という文言に、背筋が伸びる思いです。 ここ数年、一部の宗教法人の強引な行状が世間で批判の対象になり、宗教新法と呼ばれる法律「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)」まで制定された中で、「宗教活動の自由を最大限の保護する」という基本的立ち位置が行政によって改めて示されたされたことは大きな意義があり、同時に宗教法人経営者として重大な責任を感じます。 **************************************** 宗教法人は公益事業やその目的に反しない限り収益事業も行うことができます。 ただし、規則に事業の種類や管理運営に関する事項を規定し、経理も分ける必要があります。本来、宗教法人の事業は、その公益的性格からいって、それにふさわしい内容のものであり、適正な規模でなければなりません。 もちろん、宗教法人が主体的に行う必要があります。他人任せの霊園事業の「名義貸し」は、禁止されている行為です。甘言に誘われての事業への安易な参加により多額の負債を抱え込み宗教法人の破産につながることもあります。 大船に乗ったつもりがドロ船に変わらぬよう気をつけましょう。 **************************************** 住職を務めていると、日々様々な事業の勧誘が寄せられます。最も多いものは上記の「霊園等を造成、運営するにあたっての名義貸し」にあたるもので、「印鑑だけついていただければ」などと見るからに怪しいセールストークを展開します。墓地使用料の大半や墓石代金は業者が手にし、トラブルは名義人である宗教法人に押し付けられる、そんな事例が後を絶ちません。 一見さんの業者さんからのお話はすべて断り、旧知の業者さんからの提案は丁寧に吟味し、責任役員(檀家総代や世話人さん)、士業の専門家の皆様、近隣の寺院の御住職などに話を聞き、宗教法人の本分はあくまで「宗教活動」であることを踏まえて、慎重なうえにも慎重な意思決定を行いたいものです。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
|