宗教法人アカウンタント通信No.174〇仏教に関する実態把握調査(2024年度)報告書より〇仏教に関する実態把握調査(2024年度)報告書より 3月末に、全日本仏教会、および大和証券から標記の報告書が発表されました。全文は全日本仏教会のWebサイトで見ることができますが、今回はその報告書から、注目すべきポイントをいくつか考えてみます。 菩提寺への満足度は39.8%。40・50代は菩提寺への満足度は低い傾向。地方_60代以上の満足度はやや高いが、40・50代では都心、地方にかかわらず満足度は低い。 仏教への関心別にみてみると、関心ありの回答者は菩提寺への満足度が高い。菩提寺との関与別でみてみると自身が中心との回答者は満足度が高い。菩提寺や仏教との接点が高いほど菩提寺への満足度が高まることが想定される → 若年層ほど、また仏教に対する関心が薄いほど、菩提寺への満足は低い、という結果が出るかと思いましたが、逆でした。40代を過ぎ、多くの葬儀、法事に出席したり、場合によっては喪主となったりするなどしてさまざまな仏事を経験した世代ほど、自らの菩提寺や住職に対する要求水準が高くなる、ということなのだと推測します。 菩提寺住職に対するイメージは「身だしなみが整っている」「一般常識を備えている」「勉強熱心」が上位に挙がる。菩提寺への満足度が高いほど、住職に好意的なイメージを持つ傾向が高い。 特に「身だしなみが整っている」については、菩提寺不満足層においても59.6%がイメージしていることより相当強いイメージと判断できる。 逆に菩提寺住職の「身だしなみが整っていない姿」はかなりのマイナスイメージに働くことが容易に想定できる → 住職の身だしなみについて否定的な調査結果が出たのは、筆者が知る限り初めてです。正直「よほどラフな格好でない限り、檀信徒さんは気にされないだろう」程度に考えていたのですが、この結果にはショックを受けました。 考えてみると、「住職さんその恰好はちょっと」などと指摘してくれる方などそうそう居るわけもありません。例えば我々は作務衣姿でお客様対応をすることも多いのですが、作務衣は本来、清掃をするときの服装であり、草や土がついていることも珍しくありません。また真夏などは作務衣ではどうにも暑く、Tシャツに短パンといった軽装で過ごしていることもあります。そのような姿での接客が檀信徒さんその他のお客様にどのような印象を与えるか、胸に手を当てて考えてみる必要がありそうです。 仏教寺院の住職には「社会貢献活動」を求める声が最も多いが、「期待することはない」と考える人が68.6%と高く浮かび上がった。 菩提寺に満足している層では「檀信徒・門徒ともっと接してもらいたい」「檀家増加のために積極的に行動してもらいたい」など僧侶と檀信徒・門徒との距離を縮めて欲しいとの思いが窺える。 菩提寺に不満足な層では「社会常識をつけて欲しい」という声が上がる。期待というよりは不満の声と思われる → 社会貢献活動への要請はもちろんであり、特に地元への寄与や被災地支援などは多くの宗教者がなんらかのかたちで心掛けていること思います。 しかしながら、「期待することはない」「もっと社会常識をつけて」という声は相当に辛辣です。菩提寺の住職に物足りなさどころか不満を抱いたり、見放したりしている状況が見てとれます。さらにこういった声が高まると、完全に一般の方からの心の距離が乖離して、「仏事の時しか思い出してもらえない」「お墓参りの際も声をかけてもらえない」、さらにそれが進むと墓じまい、つまりと寺檀関係の解消、というケースが激増する可能性も強くなります。 「拝み屋からの脱却」、つまり仏事以外の時にでも頼りにしてもらう、相談相手として認識してもらう、そんな存在となるべく、日々模索と精進を続けていきたいと、筆者は考えます。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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