宗教アカウンタント通信No.61

○年頭所感


○年頭所感

 あけましておめでとうございます。今年は申年(さるどし)。風体のみならず、頭の回 転が早く、良く動き、世渡り上手、という、一般的に言われる申年生まれの人の性格を 体現しているような豊臣秀吉が申年(天文5年)の元日生まれ、という話は近年の研究 で否定され、翌年(酉年)生まれという説が有力なようです。今年は丙申(ひのえさる) の年ですが、仏教と猿、というかかわりで言うと、庚申(こうしん)信仰、および庚申 塔がポピュラーですので、こちらの話をします。

 

陰陽五行説では、十干の庚、十二支の申とも(万物の構成要素である火・水・木・金・ 土の中で)「金」の要素を持つため、庚申の年や日は金気が天地に充満して争いが起き る、あるいは人が寝ている間に三尸虫という虫が天帝にその人の悪事を報告しに行く、 とされました。そしてそれを防ぐ(虫が体内から逃げ出さないようにする)ために夜通 し起きて香華や飲食を供え、 真言を唱えたのが奈良時代に始まった庚申信仰です。60 年に一度巡ってくる庚申の年、特に万延二年(1860年)は幕末の混沌の中で民衆の不安 も高まり、国内のあちこちに小さな庚申塔が建てられ、人々は手を合わせたと言われま す。今でも高齢者の方は「庚申様」などと親しみをこめて呼びますね。次回の庚申の年 は2040年です。
ちなみに庚申の申は「サル」に通じますので(十二支に動物があてられたのは後の話で す)、庚申塔には猿がよく彫られています。中でも三猿(見ざる聞かざる言わざる)が 多いのですが、これは上述の天帝に「悪いことを見られない、聞かれない、報告されな い」ように、という意味が込められている、と言われます。皆様ご存知のように日光東 照宮にも三猿が彫られていますが、こちらは庚申信仰とは直接関連はなさそうです。

 

さて、ここまで述べてきた話に象徴されるように、信仰という概念は長年にわたりこの 国の民衆の生活の一部になってきましたが、先日、11月6日、英国ガーディアン紙のWeb サイトに、以下のニュースが載りました。

 

見出しは以下の通り。

 

More than one in three temples are expected to close over the next 25 years as religion faces an ‘existential crisis.

 

日本では宗教の危機により、向こう25年の間に寺院の三分の一以上が閉鎖されるであろ う、という記事です。海外に報道されたといって過度に意識する必要はないのですが、 葬儀が無宗教で行われたり、年回法要が省略されたりする事例は近年間違いなく増えて いることを筆者も実感しています。個人的には、人にとっての信仰の場所が必ずしも寺 院などの既存の宗教施設である必要はないと思わなくもないのですが、本メールマガジ ンの読者の皆様は宗教法人コンサルに携わっておられる税理士の先生方ですので、信仰 のよりどころとしての宗教法人が永続するための方策を考えていかねばならないと思い ます。今年も皆様と一緒に、宗教法人の現状をさまざまな側面から見つめていきます。 引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)