宗教アカウンタント通信No.65

○トピック 【ハスノハ】


○熊本地震

今般の熊本地震に際し、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、 被災された方に心からお見舞い申し上げます。 今回は津波の被害こそありませんでしたが、家屋の全壊半壊や交通・通信イン フラの破壊が相次ぎ、最も多い時で18万人に達しようとする方が避難所生活を 余儀なくされました。現在は多くの方が自宅に戻られたり別の住まいに移られ たりしていますが、それでも車中泊を含め不便な生活を強いられている方が依 然としておられ、ストレスや健康被害に起因する震災関連死も発生しています。 ボランティアの方々や一般の宗教者とともに、公共空間において宗教的ケアを 行う臨床宗教師が今回、震災の現場に入り、さまざまなかたちで支援活動を行 っています。私もその資格を持つひとりであり、現場には入れませんが、側面 から活動を支援させていただいております。少しでも被災された方のお役に立 てることを願っております。

 

○ハスノハ

一般生活者の悩みに僧侶が答えるWebサイト「ハスノハ」が人気を集めてい ます。本年2月に日本テレビ系の朝の情報番組「スッキリ」で紹介されたとこ ろ質問数が急増、3月からはフジテレビ系お昼のバラエティ番組「バイキング」 火曜日で毎週その問答が紹介されることとなり認知度が急増、回答が質問に追 いつかず、質問数の受付を制限している状況です。    ⇒ http://hasunoha.jp/ 特徴はなんといっても、同サイトに登録している僧侶(120名超)の回答の クオリティの高さです。彼らは自身の寺のイベント等を同サイトで告知する見 返りに、無償で悩みに答えているのですが、仏教哲学、あるいは各宗派の思想 を踏まえたうえで各人がそれなりの味付けをし、あるときには深く示唆に富み、 あるときにはきわめて実践的な回答をしています。例えば回答数の多い3名の 僧侶はそれぞれ2000、1100、800を超える数の悩みに真摯に向き合 い、答えています。一例をあげますと 「姉が自死した。自分も辛く、自殺したい」 という悩みについて 「あなたが自死すれば、その苦は、また最も親しい方に残してしまう事になり ます。何かのために、誰かの為に生きる事を考えて下さい」 「本当によく耐えてこられたと思います。人には心を開いて話す相手が必要な のだ、と感じました。身近にいらっしゃるにこしたことはありませんが、各地 に『自死遺族に関わる会』があります」 といった積極的、実践的なアドバイスが。また、 「結婚して8年経ちましたが未だ子宝に恵まれず悩んでいます」 という悩みには 「私たち夫婦にも子どもが無いのですが、数年前に諦めようと決心しました。 人は、親だけで育つわけではありません。一説には、人生には200人のかけ がえのない人がいるのだそうです。直接子どもを育む縁が無くても、多くの人 々の『かけがえのない人』になりたいと、私は願っています」 という、僧侶自らの経験を踏まえた、かつ仏教的な回答が寄せられています。 宗教者の本来の存在意義は、「故人に引導を渡し、浄土に送り届けること」や 「ご先祖様を供養すること」ではなく、「まだ悟りを開いていない人の悩みに 向き合い、道しるべを示すこと」であると、筆者は考えます。直接対面からネ ットに代わっただけで、このサイトは、社会における宗教の本来の役割を見事 に果たす「場」になっています。家庭で、職場で、さまざまなしがらみの中で 生きている現代人にとって、悩みのない日常など、かえって不自然であろうと 思います。平素宗教、あるいは宗教的なるものから距離を置いてる皆様も、も ぜひサイトを一度覗いてみてください。 日々をよりよく過ごす、なにがしかのヒントが得られるかもしれません。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)