宗教アカウンタント通信No.68
○寺・寺墓地の魅力を高めるには
○寺・寺墓地の魅力を高めるには
お盆の時期ですね。南無有縁無縁一切精霊。ご自身のご先祖様のみならず、ご自身に直接ご縁のない仏様もご供養する気持ちをお持ちになって、ご先祖様の墓参が終わられましたら同じも墓地内にある無縁仏にもお手を合わせていただければと存じます。
さて、都市部における問題は、「寺が少ないこと」ではなく「寺墓地を選択される方が少ないこと」ではないかと、前回の本メールマガジンで申し上げました。それでは、墓地を探している方の多くが、民間の霊園や公営墓地よりも寺墓地を選択するためにどのような改革が寺に必要なのかを、今回は考えてみます。
まず、一般の人にとっての、寺に墓地を取ることの長所を考えます。
(1)菩提寺と檀家という関係を持つことにより、住職である宗教者と緊密な関係を結べる。
(2)世襲により住職の地位が継承されることが多く、墓所の永年にわたる存続がほぼ保証されている。
この2点はよく考えると、「住職が信頼・尊敬できる人間である」という前提の上に成立している長所です。かつて住職は世間とは一定の距離を置きながらも一定の識見を持ち、地域の御意見番的存在で、その発言は確固たる説得力を持っていたものです。
しかし時代は変わり、住職という役職を「営業努力をしなくても一定の収入を得られるポジション」と理解し、尊大な、あるいは粗野な振る舞いを見せる住職も少なからず存在します。脱税、パワハラ、傷害などよからぬ事件の当事者としてメディアに登場することも珍しくありません。ですからまず、上記を長所としてしっかり一般生活者に認識してもらうべく、住職である前にひとりの社会人として恥ずかしくない振る舞いを身につけ、そのうえで研鑽に励み、宗教者としてより高い位置をめざすために努力する、そんなことが求められるのではと思います。
次に、寺に墓地を取ることの短所。
(1)菩提寺と檀家という関係をほぼ永続的に受け入れることとなるため、住職との関係がこじれると厄介。離檀はコストと手間がかかる。
(2)定期的に墓参や法事を行うことを求められる。
1点目は長所の裏返しであり、住職が身を正して振る舞えば自ずと檀家さんとの関係も良好に維持できます。もちろん、檀家さんに守ってもらうべき寺院規則や墓地管理規約はしっかり守っていただかねばなりませんが、基本的には宗教者としての落ち着きと矜持を持ち、穏やかな気持ちで檀家さんに接することで檀家さんとの間に軋轢は生じないはずです。ご葬儀やご法事のお布施の金額についてどのようにお伝えするかに関しては個々の住職の方針に委ねられますが、個人的にはお布施はあくまで檀家さんのお気持ちによるものですので、個別の事情も斟酌したうえで目安を説明し、包んでいただくものと思っています。
2点目に関しても、一義的にはあくまで檀家さんの気持ちの問題です。物理的、身体的等さまざまな理由により墓参やご法事が行えない場合もありますし、ご自宅の仏壇にお線香を上げることも立派なご供養ですから、寺院側としてはおおらかな気持ちで受け止めるしかないと思います。
まとめますと、寺や寺墓地の魅力を高め、多くの方に菩提寺と檀家という関係を結んでいただくためには、一にも二にも住職が研鑽を積み、信頼を得ることが重要と思います。
加えて、子弟などの後継者にもしっかりとそれを伝え、孫、曾孫の代まで檀家さんと良好な関係を維持できるよう、思いやりをもって檀務を行うことを心がけねばと、改めて感じるものです。
(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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