宗教アカウンタント通信No.69

○医療現場における宗教者の使命


○医療現場における宗教者の使命

 「自分の使命はそれぞれの人の人生の価値に気付いてもらうこと。自分のいのちを超えた価値、そういうものがあったらそれがその人の宗教」医師でも僧侶でもあり、現在闘病中の田中雅博さんが先日テレビで語っておられた言葉です。その使命を具体的に果たす役割を担っているのが臨床宗教師です。8月25日のクローズアップ現代で特集され、時間帯や番組の知名度も手伝い、今までのメディア露出とは段違いの数の反響がさまざまな場所で見受けられます。 番組の中で、緩和ケア病棟で働く医師の方が「現代の医療現場で働く人たちがあまりに忙しく、患者さんが抱えている生と死のような根源的な問題についてじっくりと向き合うことができない。そこに宗教者のニーズが発生する」と言われていました。まさに正鵠を射ているコメントで、その「患者さんに向き合う宗教者」として、臨床宗教師が注目されています。その医師の方は実際、ボランティアの臨床宗教師を病院で受け入れておられます。

 以前にも本メールマガジンで申し上げましたが、臨床宗教師は、ご遺族、余命宣告をされたご本人、医療環境で働いている職員の方、等々と真摯に向き合って話を聞き、必要に応じて宗教的な話をして、相談者の心の安寧に寄与する、そんなミッションを担う宗教者です。基本ボランティアで行動し、時間の許す限り相談者と向き合い、あるいは寄り添い、その方の心のよりどころを探すします。

 寺院経営に直接貢献する行動ではありませんし、その分、自らの寺の檀家さん等と対応の時間が削られることにもつながります。しかしながら、檀信徒さんのみに向かってビジネスを行ってきた結果が現在叫ばれている寺院経営の危機であり、宗教者は本来、邂逅するすべての人の悩みに向き合う義務を負うていると考えます。臨床宗教師の研修を受けた者のみがその責を担うわけではありませんが、健康な人を含め多くの方が、「人生の価値」、すなわち生きることの意味を探し求めているように思えるこの時代だからこそ、ひとりでも多くの宗教者が、そのお手伝いをする役になるべきだと考えます。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)