宗教アカウンタント通信No.71

○ハロウイーン・お施餓鬼・ご先祖供養


○ハロウイーン・お施餓鬼・ご先祖供養

10月31日はハロウイーンでした。今年も多くの若者がさまざまな仮装をして街に繰り出し、一定の節度を保ちながら「祭り」を楽しんでいたようです。

10月31日はもともと、ケルト人のサムハイン祭というお祭りでした。その翌日、11月1日が「万聖節(もしくは諸聖人の祝日)」、その翌日の11月2日がキリスト教の重要な行事である「万霊節(もしくは死者の日)」で、亡くなった人が現世に甦ってくると言われる日です。サムハイン祭がその後キリスト教と融合して「死者の霊や魔物(悪霊)が子供をさらったり作物を荒らしたりする」と伝えられたことから、霊を追い払うために祭司が火をつけて収穫した作物や動物の生贄を捧げました。 そして日本の寺院では「お施餓鬼」と呼ばれるご先祖供養の儀式があります。筆者の宗派では「南無有縁無縁一切精霊」というお題目の通り、ご先祖様など自身に縁のある仏様のみならず、ご縁のない仏さまにも食物を捧げてご供養するならわしです。 亡くなった方、ご先祖に対する敬意の濃度、という点で洋の東西において差異は見られるものの、故人を尊重し供養するという点では共通点があるようにも思います。

さて、ハロウイーンといえば「仮装」というイメージを持たれる方も多いと思います。上述の万霊節のコンセプトがハロウイーンのゾンビや幽霊等の仮装に影響を与えたという説、また、霊が自分に乗り移らないように姿をくらますために仮装した、という説もあります。

それが歳月を経て地域を超え、現代日本において若者を中心とした「何でもあり」の仮装に形を変えていったわけです。そこにはもはや先祖供養の意識はかけらも見られませんが、「宗教や祖先崇拝の要素を持たない祭り」というのも、21世紀を象徴する文化と理解すべきなのかもしれません。

ハロウイーンの夜にマリオやトランプ氏やピコ太郎に扮して渋谷を闊歩していた若者も、お彼岸やお盆には姿勢を正してお墓参りに行き、墓所を清掃し墓石を磨き、お花やお線香を手向けて手を合わせ、ご先祖の供養をする。ご法事にも姿を見せて、親御さんの真似をしてお焼香をする。現代の我が国は、バランスの妙、というか、メリハリの利いた社会だなと、改めて思います。宗教心の低下がしばしば話題になる昨今ですが、少なくとも「儀礼としてのご先祖供養」の習慣はしばらくの間、この国で喪失されることはないように思いますし、そうあってほしいと願わずにいられません。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)