宗教アカウンタント通信No.76

○母を送る(1)


○母を送る(1)

 私事で誠に恐縮ですが、先日母が旅立ちました。享年91歳、肺炎から一年の 入院生活を経て、静かに逝きました。

 

 仕事柄数えきれない方の旅立ちの儀式に接しており、そこにはそれぞれのご 家族の数だけ、悲しく寂しい物語があることは感じておりました。しかしなが ら、いざ自分の番になってみると、そこにあったのは、山のような段取り、手 続き、決めるべきことのリストでした。

 

 午前中に死亡宣告を受けるとただちに葬儀社の手配。16年前の父の葬儀の際 に、予定していたところと名前の良く似た業者に誤って手配してしまった記憶 があったので(そのときは自宅まで棺を運んでもらったところで気づいたので その時点で葬儀社を変更しました)、予め決めていた葬儀社に直ちに連絡、遺 体を病院から寺に運んでもらう手配。一方で、葬儀のお導師様をどこのお寺の ご住職に依頼するかを迅速に決定しなければなりません。平素相談に乗ってい ただいている僧侶に相談した上で、ある寺のご住職にお願いに上がり許可をい ただき、1週間ほど先の通夜葬儀の日程を決め、次に導師の脇に座って読経を 行う職衆(しきしゅう)の方の手配。もちろん棺、祭壇、返礼品、会葬礼状な ど一般の方の葬儀と共通する部分に関しては葬儀社の担当と相談しながら進め ていきますが、上述の導師・職衆の手配を含め、寺院の葬儀特有のチェック項 目については近隣の同じ宗派の僧侶に指示を仰がないとなにも決まりません。 幸い同地区の他の寺院の同様なケースを経験したばかりの若い僧侶たちがその ノウハウを活かし迅速にtodoリストをつぶしていってくれましたので、正直、 彼らに任せっきりでした。本当に助かりました。

 

 宗派や地域にもよりますが、拙寺の場合、一般の檀家さんの葬儀は本堂でな く、客殿と呼ばれる大広間に祭壇を設け棺を置き、通夜・葬儀を行います。し かしながら当該寺院の住職や家族は客殿でなく、本堂でそれらの儀式が行われ ます。本堂には僧侶が法事の際に修法を行う大檀(だいだん)と呼ばれる台が あり、その上に高さ1メートルほどの多宝塔が置かれています。これらを一時 的に撤去して寺院内の安定した場所に移設し、その跡の場所に祭壇を設け棺を 置き、導師・職衆の着座するスペースを設置する。これだけでもとてつもない 大仕事です。また導師が通夜葬儀の際に用いる仏具も過不足や位置を確認し、 磨き直します。また香典の返礼品も一般の方と異なるものを用意し(金額的に は変わりません)、通夜後のお清めも別の間を用意する、など、正直、会葬に 見える一般の方よりも、当日来ていただく僧侶の方々への配慮をまず優先させ ていただく形で、準備を進めました。 次号に続きます。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)