宗教アカウンタント通信No.77
○母を送る(2)○母を送る(2) 寺の者の葬儀は当然、その寺で行うことになります。我々宗教者は、通夜・ 告別式を、亡くなった方を浄土に送る荘厳な儀式と位置付けており、近隣のご 僧侶、寺族の方、檀信徒さん、ご近所などできるだけ多くの方に会葬いただき たいと考えるのが自然です。16年前に先代住職である筆者の父親を送った際 には世話人さんと手分けして250軒ほどの檀信徒さんに全員、電話で連絡し ました。加えて、60歳まで勤めていた(拙寺は規模が大きくないため、筆者 同様、父も兼業僧侶でした)役所に連絡したこともあり、500人を超える方 に会葬していただきました。今回はちょうと春の彼岸の中日にご葬儀の日程を 組んだこともあり、彼岸の入りの日に墓参で寺を訪れた檀信徒の方に、母が亡 くなった旨と通夜・告別式の日程を伝えました。二年ほど前から病気がちにな り、檀信徒さんの前にはあまり顔を見せなくなった母の具合を案じていただい ていた方も多く、結果、250名を超える方に会葬いただきました。 そして通夜、告別式。前号で申し上げたように本堂に祭壇を設え遺体を置き、 導師、職衆、随喜寺院、寺族、親族、檀家総代のみが本堂内に座り、大勢の僧 侶のご読経により式が進みます。一般会葬者の方はスペースの都合上本堂の外 階段の下から本堂内陣を眺め、ご焼香をしていただく、こちらは本堂の中から それを見下ろす形になり、恐縮しながらご会葬の方々にひとりひとり頭を下げ ました。 通常、身内の葬儀の場合は住職と言えども読経をしないので経本(お経の本) を手に取ることもなく、会葬者の方々のご様子をはっきり視認することができ ました。数珠をお持ちの方、そうでない方、おひとりおひとりのご焼香の仕方 もよく見えました。 そして、改めて、会葬にきてくださった方への感謝の念を持ちました。お香 典の有無や多寡ではなく、こちらの私事にわざわざ足を運んでくださったその お気持ち。筆者はこれまで、恥ずかしながら正直、「大事なことは伺うことよ りもお香典を供えること」というスタンスに寄りがちであったのですが、実際 に会葬してくださる、そのことがなによりも、遺族の心に訴えかけてくるのだ と、痛感しました。 もうひとつ、受付、誘導、お清めなど、それぞれの場所でお手伝いいただい た世話人さん、ご近所、取引のある石材店・仏具店の方。さらに、半世紀前に 卒園した筆者の頼みを快く受け、100台近くの駐車スペースを提供してくだ さった近所の幼稚園さん。我々が火葬場に行っている間に何事もなかったよう に一時撤去していた大檀を内陣に戻して仏具を飾り、初七日法要の準備を完璧 に整えていた若手僧侶。これらすべての方のご尽力により、それなりの規模の 儀式を無事に終えることができました。皆さまに感謝、です。 次回は四十九日法要、 納骨についてです。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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