宗教アカウンタント通信No.78

○母を送る(3)


○母を送る(3)

 怒涛のように母の通夜・葬儀が終わると、休む間もなく、お世話になった僧侶の方々 にお礼に伺い、次いで市役所の支所に出向いて戸籍や住民票を受領し、年金、生命保険 関係の処理を始めました。加えて、四十九日法要および納骨について日程決め、お声を かける範囲の選定、お清めの際に提供する料理および引き物の選定、と、次々と作業が 降ってきました。

 一般の方の四十九日法要と大きく異なる点は、檀信徒さんを束ねていただいている檀 家総代、もしくは世話人と呼ばれる方々にお声がけする、ということです。そもそも、 寺の者の通夜・葬儀は当家と寺が共同で催すのが一般的であり、したがって世話人さん、 中でも檀家総代さんは参列者よりも葬家(主催者)に近い位置づけになり、告別式にお いては喪主と並んで会葬者への御礼の挨拶を担当します。そして四十九日になると立ち 位置が変わり、お客様として出席されることになります。もちろん亡母の兄弟姉妹(四 人ともすでに鬼籍に入っており実際には代替わりしています)、その他親戚にも声をか け、四十人弱の参加を得て、当日を迎えました。

 通夜葬儀に際しては師僧に導師をお願いしたのですが、四十九日法要は故人の子であ り拙寺の住職でもある筆者が自ら読経しました。また今春大学を卒業した筆者の長男も 正式な僧階(僧侶の位)は未取得ですが、僧侶になるためのカリキュラムはすべて履修 済みですので、見習い用の僧衣を着せて脇で読経させました。亡母が誰よりもかわいが っていた私の長男。その読経で送ることで、せめてもの母へのはなむけになったのでは と思いました。

 そして本堂での法要ののち墓所に移動して納骨。これもまた一般の方と異なり、住職 夫人は「歴代住職の墓」には入らず、「歴代住職の妻の墓」に入ります。つまり、夫婦 が別のお墓に入ることになっているわけです。十七年前に旅立った先代住職(筆者の父) から四区画ほど離れた、先々代住職の妻(筆者の祖母)と同じお墓に、母は春のおだや かな日差しを浴びながら、静かに、ゆっくりと、入っていきました。

 

 こうして四十九日、満中陰の日、母は、父やご先祖様の待つ極楽浄土に到達しました。 その後は北海道など遠隔地に住む親戚に連絡を取ったり、過分に香典をいただいた方へ の返礼をしたりと、まだまだ作業が続いています。今後は形見分け、遺産分割なども控 えており、気ぜわしい時期は当分続きそうで、正直、感傷に浸る余裕は今もありません。 それでも朝晩、仏間に静かに座り、平らかな心で供養する時間はしっかりと取り、母と 向かいあうことを心がけています。

3回にわたって私事語りにお付き合いいただき、ありがとうございました。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)