宗教アカウンタント通信No.81


○新盆


〇新盆

 今年は母が旅立ってからはじめてのお盆。いわゆる新盆(にいぼん)でした。 新盆の仏様を迎える際には特に迷わないように高い灯篭を玄関や門に置く、高 灯篭(たかとうろう)という習慣がありますが、筆者の居住する地域では灯篭 を置く習慣はなくなっているものの、高灯篭という言葉は残っており、8月の 1日はご近所や親戚が仏様を供養しに訪れる、という慣行があります。そのた め、7月末に精霊棚をしつらえ、8月1日には早々に仏様を墓所から連れてき て、8月16日まで家でくつろいでもらう、というお盆の過ごし方をしました。 本堂に上がってお話をしていかれる檀信徒さんへの対応をしながら自分の親の 新盆に見える親戚ともやりとりをする。なかなかの苦行でした。

蒿蓬(こうほう)は墟壟(きょりょう)に聚(あつ)まり 蘭宦iらんけい)は山陽に鬱(さかん)なり 曦舒(ぎじょ) 矢の如くに運(め)ぐり 四節(しせつ) 人をして僵(たお)れ令(し)む ・・・・弘法大師「遍照発揮性霊集」第一巻

よもぎは荒地や丘に集まり生え 蘭の類は山の南に生い茂る。 太陽は矢が飛ぶように進み 四季の運行の中で人も死んでいく。

改めて感じました。人の命とても永遠ではない。親の命も、自らの命も例外で はありません。冒頭は弘法大師の言葉ですが、お釈迦さまも、「一切皆苦(人 生は思い通りにならない)」「諸行無常(すべてはうつり変わるもの )」と話されています。

ですから、その、いつ絶えるかもわからない、与えられた時間の中で、人への 布施(ほどこし)をいかに積み重ねるか、そして、どのみち絶える命であるな ら、悩みやわずらいに苦しめられることなく、頑張り過ぎず、あるがままに任 せて、中道の精神を実践しよう、という思いも強くしました。


(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)