宗教アカウンタント通信No.85○喪中〇喪中 新しい年も本メールマガジンをお読みいただき、ありがとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 私事で恐縮ですが、昨年3月に母を亡くし、現在は喪中にあたります。 この喪中という概念ですが、必ずしも仏教的な、あるいは仏教思想に基づいた 考えではないようです。ご存知のように、仏教では亡くなった方は中陰の満ち る四十九日にご先祖様の待つ極楽浄土に到達しますので、四十九日が過ぎると 「忌明け」として日常生活に戻る、という考え方が一般的です。しかしながら、 現代日本においては、身内に不幸があった後一年間は服喪の期間とする地方や 家庭が大多数です。 筆者は平素、一周忌の法要の際に檀信徒さんにこんな話をします。 「昔、中国では、家族が亡くなると遺族は一年間、黒衣を着て一切の歌舞音曲 を慎み、静かに暮らしました。そして一年が経ったところで悲しみの中から立 ち上がり、故人の遺志を継いで、新しい目標に向かって踏み出した、と言われ ております」 筆者も、身内を送った翌年の正月は一周忌を終えてないのだから喪中と考え、 年賀状も送らず門松も立てず、という対応をすべきだと無条件に受け入れてお りますので、この正月は例年とは異なり静かに過ごしました。 とは言いながら、寺族に不幸があっても檀信徒の方にはまったく関係のない 話で、例年通りに大晦日の夜、年が変わろうとする頃から檀信徒さんがお参り に見え、元旦からは墓参および年始のご挨拶に見える方が多数。こちらが服喪 中であることをご存知の方もご存知でない方もお忘れの方も、それぞれ平常運 転で年始のご挨拶を交わしていかれました。すべての檀信徒さんにとって垣根 の低い、気軽に寄っていただける寺であることを指向する拙寺にとって、それは たいへんありがたいことでした。 ほどなく3月、母の一周忌がやってきます。仏教的な根拠があるかどうかに こだわらず、そこまでは常よりも平静を保ち、心を落ち着けて万事に対したい と考えます。そして一周忌を終えましたら、あらゆる檀信徒さんの家族構成を 完璧に把握し、フランクに会話を交わしながらご高齢の檀家さんの健康を案じ ていた母の姿を胸にとどめ、丁寧に檀務に当りたいと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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