宗教アカウンタント通信No.87○宇宙葬〇宇宙葬 故人のご遺骨を宇宙に散骨する、いわゆる宇宙葬の会社の方のお話を聞いてき ました。 宇宙散骨というと、海洋散骨などと同様に、骨壺一個分のお骨をまるまる宇宙に 撒くようなイメージを持たれるかもしれないのですが、実際にはサイコロの大き さほどの立方体の箱にご遺骨の一部を収め、その箱を150体ほど集めてそれを 小型の人工衛星に乗せて打ち上げるそうです。そしてその衛星は地球上空を数週 間ほど旋回したのち大気圏に落下して燃え尽きる、とのこと。費用は約30万円 だそうです。すでに今秋打ち上げの分は予約で埋まっており、その次の打ち上げ は来年の秋を予定しているそうです。 話を聞いてまず、この方式での散骨は、我々寺院経営者の収入基盤である「墓 所」の存続にかかわるものではないと感じました。海洋散骨と異なり、ご遺骨の ごくごく一部が宇宙で散骨されますので、残りのご遺骨は宇宙と別の場所に散骨 するなり納骨するなりする必要があります。ですから、宇宙葬をしたうえで通常 の寺や霊園の墓所に納骨をする、という方式はあり得るわけです。例えば拙寺の 檀徒さんが亡くなったとして、宇宙葬のご希望をお知らせいただいても、お墓参 りやご法事など通常の檀徒さんのお役目を果たしていただけるなら、まったくも って何の問題もなく受け入れられます。 もうひとつ、費用に関しても思いのほかリーズナブルで、生前、星や天体がお 好きだった方、そちらの関係のお仕事をされていた方等をご供養する際には、き わめて現実的な選択肢であると感じました。 もちろんまだ課題も多く、天候等の要因で発射日がしばしば変更になる、アメ リカまで行かないと発射の場に立ち会えない、などの懸念点もあります。しかし ながら、人々のライフスタイルの多様化、および科学技術の進展がもたらしたこ の新たな散骨の形態は、従来の死者供養の様式に何ら影響を及ぼすものでなく、 むしろひとつのバリエーションとして、徐々に普及していくのではないかという 印象を持ちました。その動向を継続してウオッチしていきたいと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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