宗教アカウンタント通信No.89○長男が地元に戻ってくることを諦めている親が6割以上〇長男が地元に戻ってくることを諦めている親が6割以上 不動産情報サービスのアットホーム株式会社は、東京で働く長男を持つ40歳 以上の親618名を対象に、「長男に地元に戻ってきて欲しいか」「将来長男と 同居をしたいか」などを聞く、「長男にUターンして欲しいか調査」を行いまし た。 その結果、 「長男に地元に戻ってきて欲しい」と思う親が45.6% でありながら 「長男が地元に戻ってくることを諦めている」親が66.5% という、なんともせつない事実が浮かび上がりました。 この調査結果はまさに、筆者も何度か述べており、現代における地方寺院の 抱える最大の問題である「いわゆる寺離れ、墓じまい(墓所から先祖のご遺骨 を出して墓を処分すること)による経営の悪化」がいっそう深刻な状況になっ ている原因を証明していると言えます。 寺にとって、ある方が檀信徒になっていただくということは、その方が寺に 墓地を取り、石塔を建て、ご先祖のご遺骨を納め、ご両親の万一の際には通夜 葬儀の導師をその寺の住職に依頼し、四十九日の納骨後は定期的に墓参をし生 花やお線香を供え、一周忌、三回忌等の年会法要もしっかりと執り行い、その 慣行をお子さんお孫さんに継承していく、そんな一連の所作を意味します。 その所作は、基本的に長男等の「実家を継承する人」が、若い時はともかく 、一定の年齢になった際に実家に戻るライフスタイルを前提として今まで伝承 されてきたわけです。 もちろん、実家を離れて生活している継承者が墓所を守り続けるケースもな いではありません。筆者の寺でも遠隔地に住居を移しながらずっとお付き合い をいただいている檀家さんもおられます。しかしながら理想としては、菩提寺 やお墓と檀家さんの居宅は遠くない位置にあって、頻繁に顔を合わせ、コミュ ニケーションを密にしながらお付き合いをする、寺院としてはそんな姿を望ん でいます。 今回の調査で、長男の帰省回数は平均で年2.2回となっています。この頻 度のまま代替わりするとなると、墓参は年に2回、下手をすると法事も行われ ず、墓所の継承に支障が出ることが想定されます。それではご先祖様に申し訳 ないと、長男などの墓地継承者が近年墓じまい、墓所の移転という行動に踏み 切るようになってきているわけです。今回の「(親が長男を)諦める」という 回答の多さが、その流れにいっそう拍車がかかることを暗示しているようで、 なんともいたたまれない気持ちになりました。地方における寺院経営は、今後 さらに難しい局面を迎えることになりそうです。地方寺院の側も早急に対策を 講じるべきでしょう。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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