宗教アカウンタント通信No.94〇LGBTと仏教〇LGBTと仏教 近年、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)などの、 いわゆる性的マイノリティの方々の社会的地位に関する議論が盛んにおこなわれるように なってきました。今回はこの問題について仏教や寺院との関連を考えます。 まず、一部の他の宗教と異なり、仏教には同性愛、あるいはその他の性的マイノリティと よばれる性的志向に関して、奨励する教えも、性的逸脱として批判する教えもありません。 決してタブーではないことをご理解ください。 これまで、日本の伝統的な家庭や社会制度の中で同性愛や同性カップルはどうしても複雑 な立場に置かれがちでした。仏教や寺院との関係においてもそれは同様で、例えばある方が 亡くなった場合、同性のパートナーが喪主を務めたり、墓地継承者になったりする例はきわ めて稀でした。寺院側が拒んだというより、ご遺族側がそれをよしとしなかったものだと考 えます。 また、お戒名には明確な男性用と女性用の名前があり、たとえ心がどうあろうとも、生物 的な性に基づいてお戒名をつけることが当然に求められておりました。 しかしながら、ここ数年、LGBTの方々に対する社会的な体制の整備、対応の必要性が 頻繁に叫ばれるようになり、一部の自治体で同性婚が認められるなど、徐々に配慮がなされ るようになってきました。筆者の友人で生まれながらに「体は男性、心は女性」というメン タリティーを持っていた人がいます。学生時代は女装を趣味とし、社会人になってから性別 適合手術を受け、心身とも女性になりました。 一方で彼女は趣味で遍路を行っているうち仏教に目覚め、僧侶の資格を取りました。彼女 を住職として迎える寺院がなかなか見つからなかったのですが、メディアやSNSを活用し た当人の情報発信が実を結び、このほどある寺院の住職に就任することになりました。彼女 は檀家さん向けの業務の傍ら、同じような立場の人々の力にもなりたいという意思を持っ ています。 我々一般の寺の住職も、性的マイノリティの方々にとって寺院が敷居の高い存在でなくな ることを目指し、何ができるかを日々自問しつつ、できることをしていきたいと思います。 実際に仏教界や宗派の中でこの問題が話される機会はまだ多くはないのですが、いつ、その ような立場の方が相談に訪ねてこられても真摯に受け止め、お悩みにしっかり向き合って、 少しでも心が軽くなるようなアドバイスをさせていただくことができるよう、研鑽に励む所 存です。 白雲自白雲(はくうん、おのずからはくうん)。景徳伝灯録にある禅語です。白雲はその まま白雲であり、そのありのままの姿であるからこそ美しい。人とても同様です。人ぞれぞ れの個性を尊ぶ世の中に、さらになっていけばと思います。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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