NPO通信No.203「雨水が原料のサイダーを開発」
雨水の水資源としての活用に取り組む福井工業大環境情報学部環境食品応用化学科の研究室が、雨水を原料にした甘いサイダーやソーダ(炭酸水)などについて、販売が可能な品質で製造できる工程をこのほど確立しました。雨水ドリンクは、渇水になったり、地震で水道が使えなくなったりした際、雨水を活用できれば防災力が高まると、研究室とNPO法人のメンバーや会社経営者らでつくるグループ「あめぐみ(雨水生活普及委員会)」が企画しました。今年6月、キャンパス内で雨水300リットルを採取し、福井市内の清涼飲料水メーカーの工場で、試験製造しました。今回研究室は、市販できる水準まで品質を高めようと、10月中旬、約500リットルの雨水を採取し、新たに開発した浄化装置で処理。その後、同協業組合の工場の生産ラインをフル稼働して、250ミリリットル瓶でサイダー600本、ソーダ600本、ウォーター(通常の飲用水)300本を完成させました。原料の雨水は、一般社団法人・全国清涼飲料連合会から指示された、食品衛生法に基づく45項目の水質基準をすべてクリアしたそうです。
「旧奈良監獄を元刑務官のガイドで巡る貴重な見学ツアー」
今から1300年以上前の奈良時代に首都として栄えた平城京。その外京の北側にあたる「奈良きたまち」が今、なにやら盛り上がりを見せています。奈良きたまちに含まれ、歴史ある町並みを残す奈良市般若寺町。この閑静な住宅街に突如として現れるレンガ造りの建物は、日本最古の刑務所です。奈良監獄として1908年に誕生し、1946年からは奈良少年刑務所に改称し使用されてきましたが、老朽化の問題から2017年に閉鎖しました。この旧奈良監獄と長崎・金沢・千葉・鹿児島に建てられた5つの監獄を指して「明治五大監獄」と呼ばれています。やはり老朽化により各地で取り壊しが進み、完全な形で現存するのはここだけになってしまいました。鎖国を続けていた幕末の日本に、開国を求めてペリー率いる艦船がやってきた黒船来航事件はあまりに有名です。その際に締結された日米修好通商条約は、いわゆる治外法権を認めるなど日本に不利なもので、明治維新以降の近代日本に暗い影を落としました。不平等条約の改正には、日本が欧米列強と肩を並べる近代国家であると示すことが必要で、国家の威信回復に重要な役割を果たしたのが監獄の建設でした。国の人権意識を対外的に示す施設として位置づけられていた監獄を、国際標準化することにより日本が近代国家であると世界にアピールする必要があったのです。刑務所というと、近寄りがたく、ともすればタブー視されることもある施設ですが、ここには「地域に愛される刑務所」の姿がありました。償いと更生を心から願い、職業訓練や学習指導に力を注いだ刑務官たちの思い、犯した罪を自覚し、更生に取り組んだ受刑者たちの姿勢、それを見守ってきた地域の温かい目でした。そんな旧奈良監獄のことを知り、行政刑罰について考えるきっかけになればと、実際にここで刑務官として勤務したOBたちによるガイドツアーが実現することになりました。企画したのは、産業遺産の保存・活用に取り組むNPO法人「J-heritage」(兵庫県神戸市)です。これまでにも内部見学ツアーはありましたが、自由見学のものが多く、入れない場所もありました。OBによるガイドツアーでは、受刑者たちを見守ってきた刑務官の貴重な話が聞けるだけでなく、今まで公開していなかった場所も巡る予定とのこと。数々の映画やドラマの撮影地にもなっている旧奈良監獄、撮影時の秘話なんかも聞けるかもしれません。
「性差気にせず「いい湯だな」 銭湯の「高い壁」一つの乗り越え方」
公衆浴場の利用を諦めることが多いLGBTら性的少数者も、性差を気にせず、ゆっくり銭湯を楽しみたい−。そんな願いをかなえるイベントが今月、兵庫県尼崎市内で実現します。「力になりたい」と手を差し伸べたのは、かつて当事者の利用を断ったこともあった同市の銭湯でした。主催するNPO法人「MixRainbow」(兵庫県)の理事長は、男性として生まれ、今は女性として生きるトランスジェンダーです。幼い頃は銭湯に通いましたが、約20年前からホルモン治療を始め、体の変化で行けなくなりました。多くの当事者にとって、銭湯の利用は「高い壁」です。公衆浴場は、身体的な性別で男湯か女湯に分けられるのが一般的で高い費用がかかる性適合手術を受けないと、女性として浴場には行けないと別のトランスジェンダーの女性は語ります。今回のイベントに場を提供するのは蓬莱湯(尼崎市)に打ち合わせのため、同法人のメンバーは7月に集まりました。「水着もバスタオルもOKにしよう」「脱衣所は仕切りつける?」−。多様な性指向の参加者がいることを想定し、知恵を絞ります。初回のイベントは11月の定休日です。安心して入浴してもらうため、日付は非公表にします。既に「十数年行けなくて、諦めていた。うれしくて涙が出そう」との声が寄せられています。
(NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり)
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