NPO通信No.207「失業、収入減救うキャッシュ・フォー・ワーク」
東日本大震災の生活復興支援に用いられた仕組みが、コロナ禍で経済的な打撃を受けた働き手の支援に使われています。被災者が自ら被災地支援に参加して働いた「キャッシュ・フォー・ワーク(CFW)」という手法で、当時は「仮設の仕事」と呼ばれ、仕事を失った被災者に仕事と収入、やりがいをもたらしました。東日本大震災時のCFWでは、被災した人々が浸水家屋の泥のかきだしや片付け、仮設住宅の住民支援などを行い、自ら故郷の復興にも携わりました。これらは緊急かつ一時的な「つなぎの仕事」であったことから、CFWに「仮設の仕事」とあだ名がつきました。ところがコロナ禍のCFWは、そんな仮設の仕事でつなぐ間に、次のステップにつながる職業訓練を行う点で発展を見せました。困難を抱えた若者らの就労支援などに取り組むNPO法人「キズキ」(東京)が令和3年2月〜今年1月に行ったプログラムでは、コロナ禍の影響で失業や減収に見舞われた10〜30代の14人が、半年間、有給で動画編集などの訓練を受け、そのスキルをいかして他の就労移行支援事業所などの支援も行いました。CFWが助けるのは収入面だけではありません。失業や減収で落ち込んだ参加者の気持ちも救っていました。コロナ禍のCFWは、原資に10年以上取引がない休眠預金を活用します。一般財団法人「リープ共創基金」(東京)が事業者の選定にあたりました。初回(2年9月〜4年1月)は、前出のキズキのほか、コロナ禍で打撃を受けた大学生らの就労支援を行うNPO法人「G−net」(岐阜)など13団体のプログラムに、コロナ禍で失業や収入減に見舞われた216人が参加しました。コロナ禍では、新たに職業訓練も兼ねて取り組みが広がり、発展的に受け継がれています。
「捨てられた鳥を保護」
「ピッピッピ」「チュンチュン」「チッチッチー」――。
小鳥の声がオーケストラのように響き渡る、マンションの一室、埼玉県戸田市にあるNPO法人「小鳥レスキュー会」の保護施設です。500羽を超えるセキセイインコをはじめ、文鳥やアヒルなどの計約700羽が、代表理事やボランティアの手によって第二の人生を歩み始めています。新型コロナだけでなく、同NPOが動物の保護活動を始めた20年前からは想像もつかない理由で鳥を手放す飼い主が、最近は増えているといいます。SNS投稿動画に惹かれてオカメインコを飼ったものの、“歌わないからSNSで使えない”と手放す人、鳥に産ませた卵が孵(かえ)るまでのドキュメンタリー映像を見た子どもが、夏休みの自由研究に同じことをしたいと親に頼んで飼い始め、ヒナが無事に誕生して課題としての役目を終えるとあっさり飼育を放棄するのです。鳥を“映え目的”の道具として手に入れ、使い捨てる飼い主が急増しているのです。その一方、最近、保護鳥を家族に迎えたいと望む方も増えてきました。譲渡までのプロセスとして、会員を1年間ご継続いただいたのち、複数回の面談を行っています。保護施設で小鳥の世話をしたいと希望するボランティアも、増加傾向です。700羽の世話をするのに、1日18時間、1か月で150万円がかかります。ボランティアの方々、そして会費や寄付を納めてくださる方々のおかげで、小鳥たちはこうして元気に毎日さえずっていられるのです。
「マンホール蓋の写真を集めるマンホール聖戦」
ゲーム感覚で地域課題の解決を目指す「マンホール聖戦」と名付けられた市民参加型イベントが、3月19〜24日の6日間、静岡県内で初めて三島市で行われます。市民がスマートフォンなどで撮影したマンホール蓋の写真を集め、維持管理の効率化につなげるのが目的です。市下水道課によると、三島市の下水道普及率は県内トップクラスで、市内にはマンホールが約1万3000個あります。高度成長期に設置されたものが多く、蓋にはすり減り、ひび割れなどの傷みが進んでいます。委託業者が目視で確認し、毎年200〜300個を交換していますが、設置場所によって劣化具合は様々で、維持管理にかかる手間が大きな課題になっていました。マンホール聖戦は、水道関連事業を手掛ける「日本鋳鉄管」(東京都)と、インフラ情報の管理などを行うNPO「ホール・アース・ファウンデーション」(シンガポール)が仕掛けています。写真の投稿には、専用のウェブアプリ「鉄とコンクリートの守り人」を使います。誰も投稿していないマンホールの写真にはポイントが付き、投稿数を競うゲーム性があるのが特徴になっています。昨年8月に東京都渋谷区で初開催されると、全国的な話題になり、11月に実施した石川県加賀市では、2日間で約8000個のマンホール蓋の写真が集まりました。市スマートシティ課によると、約100人が参加し、3世代で楽しそうに探す姿も目立ち、1週間を予定していましたが、わずか2日で終わり驚きと手応えを感じました。三島市は、楽しみながら下水道への理解を深めてほしいと、市民の参加を呼びかけています。 (NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり) |